2012年2月22日水曜日

132 文具王のトークショーに行ってきた


2012年2月18日、19日の両日、札幌にある老舗大型文房具店「大丸藤井セントラル」(札幌市中央区南1条西3丁目)にて開催された、文具王こと高畑正幸さんのトークショーに行ってきた。(写真撮影禁止のため、画像はAmazonなどから引用。その他はサイトなどへのリンクになっている)

■「つかみ」は自社製品PR?
まずは文具王、自己紹介を脇に置き、自社(サンスター文具株式会社)製品の宣伝。「これをやらないと『他社の製品ばかり取り上げている』と会社から怒られるので」、以下の2つの製品を紹介。

  • かどまるPro…角を丸くするカッター。3,5,8ミリの径で角を丸くしてくれる。ラミネートも切れる。
  • スティッキール ステープラー…3月発売のスティック型のステープラー。本体尾部にクリップや替え芯を入れるスペースがある。姉妹品にはさみが出ている。



次に文具王の自己紹介であるが、もう著名なのでここでは割愛。

会場では、文具王の自宅写真が紹介された。壁一面のプラケース、それも天井まで届くほどの高さの写真には、会場からなんとも言えぬ反応の声が。その引き出しの中身はちゃんと分類され、ペンに至っては台紙に1本ずつしっかり固定されている様子が映し出されると、笑いが広がった。
「なぜこんなに集めているかというと、ペンを比較する場合、いくらメーカーのサイトに写真があるといっても、現物を見ないと細部まではわからない。単なるコレクターではない」そうだ。

■難易度が高かった?お題
さて、今回のトークショーは、主催者から「なつかしの文房具」というお題が出された。
文具王は、このお題をもらってからトークショー前日まで3~4週間悩んだそうだ。
「なつかしいと言っても、人それぞれ。じゃあ、みんなにとっての『なつかしい』は何か?それは年齢層にもよるだろうし、現に会場にはいろんな年齢層の方が集まっている。一般的になつかしいというのは難しい」
そう思った文具王は、「しょうがないので、自分の『なつかしい』を話そう」と決断、自分にとっての「なつかしい」は小学生、中学生、上限は高校生くらいまでと範囲を絞る。

その頃、80年代後半から90年代初めにかけて「BTOOL(ビーツール)マガジン」という文房具専門雑誌が発売されていた。同級生が漫画雑誌を買う中、この文房具専門誌を定期購読する中学生だったそう。

その「BTOOL(ビーツール)マガジン」に読者の投稿コーナーがあり、そこの常連さんだった「とみやまさん」という人が、文具王の「心の師匠」。
とみやまさんは投稿で、オリジナルのイラストと文章で文房具を紹介していた。その絵のクオリティが高くて感動した文具王は、「すばらしき道具たち」という連載を始めた。
「要するにパクリから始めた。今風に言えば、インスパイアーされた」

だが、始めた当初はネットなどの無い時代で発表の場がなかったため、ただ書きためていただけで、時々生徒会の会報の空きスペースに載せてもらう程度だった。大学生になってからは、冊子にしては文房具メーカーなどに配っていたが、メーカーにとっては当たり前のことしか書いていないので「ふ~ん」程度の扱い。
でも、毎年しつこくやってると、相手にしてくれるメーカーも出てきて、「ホームページやって公開したら?」とか「TVチャンピオンに出てみない?」と声をかけられるようになり、さらに出演したTVチャンピオンで一緒になったサンスター文具の部長さんと知り合い、同社に入社、現在に至る。

ちなみに、文具王は人物やストーリーを書けないので、こういうイラスト+解説ものを書いていたのだそうだ。
「10年も続けていると、絵もうまくなる」と解ったとか。

教訓(by もの書き写真堂):人間、ひとつのことをコツコツ続けていると、おのずと道は開ける・・・かも?

■文具王の「なつかしの文房具」
さて、文具王にとって「なつかしい」と思える文房具とは?
会場では、以下の4つを紹介してくれた。

小さな文房具がケースにコンパクトにまとまったセット。今はミドリという会社が同様のものを発売している。

今でもおなじみのテプラだが、最初はダイヤルを回して文字を選択していた。
文具王はクリスマスプレゼントとして買ってもらい、替えテープを一気に2本も使ったそうだ。

・バンダイ「ポケットザウルス」
はさみなどの文具が恐竜の形をしている。変形させて使う。

・サンスター「文九郎」
9個の文具を収納しているロボット。
これは欲しくてしょうがなかったが、高かったので買ってもらえなかったそう。そんな子どもは大人になってからどうするか?「会社に入って、2代目文九郎を作ってしまうのです」。マジで作ったようだ。

■なつかしのCM
なつかしの文房具のCMといえば、社員でなくてもはずせないということで、サンスターの「アーム筆入」。あの「象が踏んでも壊れない」というやつだ。文具王は会社のアーカイブからこっそりコピってきたムービーを会場で披露。子どもの服が昭和だったのが印象的だった(←当たり前)。

この筆入れ、今で言うと警察の機動隊が使っている透明の盾にも使われているポリカーボネード製。これは丈夫なはずだ。
だが、当時の国会議員から「誇大広告じゃないのか?」と言われ、国会に呼ばれたことがあったそうだ。サンスターの社員が居並ぶ議員ひとりひとりに筆入れと金づちを渡し、「壊れるまで叩いてください」とお願いした。もちろん、誰もひびを入れることすらできなかったそうだ。
なお、この商品は今でも「NEWアーム筆入」として発売中だ。



■温故知新?
最近の文房具に「針なしステープラー(ホチキス)」というのがある。数種のメーカーから販売されているが、どこが発明したのか?





実は、大正11年に、東京文祥堂というところが発行した文房具カタログにすでに載っているのだ。
当時は「無針紙綴器」と言っていたが、仕組みは現在のものと全く同じ。びっくり。
ただし、2~3枚しか綴じられなかったようだ。(現在のものは5~12枚)
針を使ったホチキスもあったが、当時は針が高価だったので、針なしのほうがメジャーだった。

■懐かしい?ヘン?
古いものと新しいものが入れ替わる端境期には、それらの折衷案のようなものが現れては一瞬で消えていく。

例えば、そろばんと電卓。そろばんが主流であるところに徐々に電卓が浸透していく。そろばん派の人がそろばんを使いながら電卓の使い方も覚えていく、という用途かどうか不明だが、シャープから横型の小型電卓とそろばんが一体となった製品が出ていた。

特殊用途に限られた電卓「分卓」というのもあった。時間と分を計算するための電卓で、形がカセットテープというところが、この分卓の使用目的を表しているのだそうだ。
当時、自分の好きな楽曲だけを集めてカセットテープに入れる「マイ・アルバム」が流行。楽曲の分数を足してカセットテープの時間内に収まるかどうかを計算するときに、この分卓が使われた。

今ならExcelが時間の足し算引き算をしてくれるけど、ちょっとした残業時間の計算なんかには、この分卓、まだ使えるんじゃないだろうか。

■ホビーとして「なつかしの文房具」を楽しむ
最後に文具王は、「なつかしの文房具」の楽しみ方を提案。
たとえば自宅の押し入れの奧から出てきた昔の文房具や、骨董市で売られている(珍品、高額ではない)古い文房具などを入手し、それぞれ当時の様子を思い出したり、想像したり、あるいは由来を調べてみるなどといった「ホビー」としての文房具を楽しんでみては、とのこと。


   ↑
文具王おすすめの本。今でも手に入る「なつかしの文房具」を探すときの参考に。

以上、約1時間にわたる文具王のトークショー。写真撮影禁止だったので、文章だけになってしまった。

トークショー終了後、文具王を囲んでの懇談会状態になり、そこで本番にかぶり損ねた王冠をかぶっての写真撮影会になったり、愛用のバッグ(近日発売するらしい)や「文具王手帳」、ペン、そしてモレスキンを見せてくれた。
(以下、iPhone4Sで撮影)
王様姿、決まってます。
この王冠、友達がプレゼントしてくれたもので、TVチャンピオンでは盾すらくれなかったとか。


文具王は、モレスキンも愛用。これは、使ってみたペンを見開き2ページで解説したもの。イラストではなく、写真を貼っている。
このエピソードについては、寄稿させてもらっている「Notebookers.jp」というサイトで、「文具王のモレスキン」というタイトルで書かせてもらったので、そちらも読んでいただけるとありがたし。


文具王愛用のペンケース「コクヨ クリッツ」。数えたら22本入ってた。これ、いいかも。



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