堀さん、シルエットになってしまった・・・ |
2012年2月19日(日)、東京ライフハック研究会Vol.8が開催された。
そこで、堀正岳(@mehori)さんが「人生を変える小さな習慣」と題して講演を行ったので、その内容をまとめてみた。
■「ライフハックやめます」宣言!?
まず、冒頭で堀さんが「ライフハックをやめます!」と宣言。どういうことだ?という疑問を抱きつつ次の言葉を待つと、
「ライフハックというのは、アメリカのあるエンジニアが時間を稼ぐために小さな工夫を重ねていたことが始まり。それが日本に入ってきた当初から”ライフハック=仕事術”だったのだが、アメリカには”ライフハック=仕事術”という概念はないんです」
つまり、仕事術としてのライフハックはやめるけど、人生を変える小さな習慣を紹介し続けますよ、ということなのだ。冒頭からちょっとびっくり。
その日本での”ライフハック=仕事術”だが、「生産性を上げるための○つの方法」「人に好かれるための○○の方法」「Evernoteを使いこなすためのたったひとつの方法」など、ライフハックが大喜利になっていると指摘。
「ここに来ている皆さんは十分に生産性が高いのです。なぜなら、わざわざ日曜の昼にこんなところに集まっているのだから。『生産性を上げるためにスキルを身につけよう』というのは皆さんを歯車にするため、交換可能な歯車にするための罠なんです」
スキルを身につけて頑張ろう、でも頑張りすぎて病気になり倒れる、倒れたら若い者と交換される、という図式の罠。
「国・会社が幸せにしてくれる神話は終わりました。でも、状況が悪くなっているから私はチャンスだと思う。”普通”であることから1歩外に出ている人に、とてつもないアドバンテージがある時代になります」
そこで目指すべきものは2つ。
- Indispensable(交換できない、欠かせない)人間になる
- Happyな人間になる
交換できない人間なら、今の会社で切られたとしても他でやっていけるし、発言したとしてもみんながちゃんと聞いてくれる。このふたつをクリアすれば、5年後、10年後も生きていける。
■毎日やることを少し変えてみる
- Patience
- Passion
この2つも大事。
Patienceというのがライフハック。「たったひとつの○○」で人生はすぐさま変わらない。小さな習慣の積み重ねが人生を変える。
そのためには、毎日やっていることを変えるしかない。
まずやることは「睡眠のログを取る」。活動的ではない時間帯というのが境界として都合のいい時間帯なのだという。自分がいつどれだけの睡眠を取っているか、あるいは必要としているかを把握するのが最初。
次に、毎日やっていること(ルーチン)のログを取る。そうすると、例えばブログを書く時間はどれくらい必要か、あるいは何分確保できるかというのがわかる。
ちなみに堀さんは110分で2本のブログ記事を書くのだが、今はその時間が取れず、せいぜい1本だとか。
さらに堀さんがブログを始めるに当たり、「このための時間は小手先のハックでは生み出せない」と解っていたので、テレビを観ない、ゲーム禁止(今はある人にそそのかされて?1本だけやっているそうだが)とした。
「どんなに素晴らしいライフハックでも、自分に適用できなかったら身につける価値はない。毎日、自分に適用可能なものだけ残すべき」
■「ありがとう」を毎日言い続ける
例えば堀さんは、Gmailのフィルタを300個作った。この話をすると「じゃあ、私も今週末に200個作りますよ!」という人がいるそうだが、堀さんの300のフィルタは、毎日少しずつ作り続けて5年で300個になったという「結果」なのだ。これが「毎日やること、毎日適用可能なもの」に価値があるということの証明だろう。
堀さんは他にも毎日やっていることがある。それは「ありがとうの数を数えること」。毎日いくつの「ありがとう」を言ったかをカウントしているそうだ。
そこで解ったのが、すごく嫌いな人や敵対している人でも、毎日「ありがとう」を言い続けていると自分に対する態度が好意的に変化するということ。
「だいたい500回くらいありがとうと言えば必ず変わる。毎日付き合わねばならない人ならば、敵対したって仕方がない。それに500回言えば変わるってわかってるから、ありがとうと言い続ける。私は敵対している人を変えるのが大好き」
「ありがとう」の数を数えなくとも、毎日欠かさず「ありがとう」を言い続ける。これなら誰でも始められるのではないだろうか?
■「ビジネス書を読め」も罠?
「ビジネス書を読まないといけない」というのも歯車にするための罠だと堀さんは言う。
「みんなと同じ本を読んでいると言うことは、みんなと同じ知識しかないということ。いくら気づきがあるといっても、これでは付加価値は生まれない」
そこで付加価値を付けるために、みんなが100冊読むところを120冊にする。そのためには速読や読書セミナーへGo。だが、これも完全な罠だと堀さんは指摘する。
「そういうことをするくらいなら『老子』を読む」
今はそのための時間が取れなくて1日2ページしか読めないのだそうだ。それでも他の人が読んでいない本だから十分にアドバンテージになる。
「こうやって、毎日やることを少し変にする。時間の使い方、読むもの、ブログを書くというだけでも変。これがすべてアドバンテージになる。ちなみに、みなさんがこの会場にいるだけですでにヘンですから」
■無償のギフトを与え続ける=Passion
「自分は交換可能な人間ではないということを毎日意識できるような、小さな習慣をぜひ作って欲しい」
ここからPassionの話になるが、小さな習慣だけでは「特別な存在である」ということを意識出来ない人には、何かギフトを与えることがいちばんの近道だという。
セス・ゴディンの「Linchpin」(「邦訳も出ているが、ぜひ原文で読んで」と堀さん)という本は、まさにIndispensableであるかどうかを問う本で、ここにはIndispensableになるには何かギフトを与える人=アーティストになれと書いてある。
ここで言うギフトとは、単に物を与えるということではない。
堀さんの挙げた例では、諍いが起きるといつも仲裁に入る人。その人が異動でいなくなって初めて「あの人がいたから、争い事が丸く収まっていたんだ」と思われる人。諍いを収めるということが、その人が与えていたギフトなのだという。
無償のギフトを与え続けて、とんでもないところに行った人が海外にいる。
- 1週間に1曲を無料で(まれに1ドルの時も)約1年間52曲をサイトにアップし続けた人。
- ワインビデオブログで平日は毎日1本、ワインの紹介をしていた人。
それぞれ本業で大成功を収めた。
無償のギフトを与えている人間というのは、最悪でも無視される程度。与え続けていると必ず何かが戻ってくるのだそうだ。
では、そんな人が日本にもいるのか。堀さんは、いしたにまさきさんとコグレマサトさんを挙げた。なぜ無償で情報提供をするのかと彼らにたずねたときの答えが、「有料でやっても誰も見ないから。無料は当たり前」。
「こういうヘンな人にアドバンテージがある時代。それはネットがあるからこそ出来ることで、それによって人がつながることが出来る」
こういうと「自分と彼らは違うから(できない)」という人が出てくるが、堀さんは「どんな人でも無償のギフトは与えられる」と答えるそうだ。
例えば、「感じのいい店員がいたからその店で買う」といったときの店員さん。また、堀さんの職場の話として、いつも笑顔で「おはようございます!」とあいさつする警備員。「この人はたとえ人員整理になったときでも切られずに残る人」。いずれも感じの良さ、笑顔が無償のギフトなのだ。
もちろん、先に挙げた「ありがとう」もギフト。そして、与え続けることで「自分はギフトを与え続けているから、ここにいていいんだ」と自分に自信が付くのだそうだ。
■情報弱者と情報強者?
情報というのはピラミッド状にあるのではなく、それぞれの人が信じているクラスタが並び、そのクラスタが少しずつ重なり合って存在している。つまり、みんな正しいのだ。情弱もなにもないと堀さん。
「後からやってきて、誰かが一度書いたネタを2番目に書いたから情弱だというのではない。2番目であっても、その場でコンテンツを出した人が勝ち。出さなかった人は『何もしなかった』というだけ」
「『自分の好き』を発信することが大事。何度目に書かれたネタでも構わない、古くても構わない、他の人と違う意見でもいい。そうやって発信していると、どこかのクラスタの人に伝染する。そこに直結すればいい。
先に挙げたようなすごい人でなくても、届けたいクラスタを見つけられればwin。才能の有無ではない。つながることができる先があれば、届けたい言葉がある先が見つかればwin。そして、必ずつながる先はある。それを見つけるためには、ギフトを与え続けること」
■おわりに
以上、passionというのは、ギフトを与える人になれるか、アーティストになれるか、という話だったが、具体的にどんな行動を積み上げればいいのか、どんなギフトを与えればいいのか、いつから始めるのか?
「『スキルをあげてから』ではなく、『今日から』やる。明日死ぬかもしれないのだから。人生3万日なんて嘘。そんなに人生はないのだから、今日からやる。みなさんそれぞれに合ったギフトを考えてみてほしい。
みんなの「好き」が世界を埋め尽くすことを期待して、講演を終わりにしたい」
【講演を聞き終えて】
いちばん印象に残ったこと、グッと来たことは、
- 500回ありがとうを言い続けると人は変わると解っていること。
- ギフトを与える人になることが、歯車ではない、交換できない人間になるということ。
このふたつに尽きる。
堀さんの話を聞き終えてから、さっそく自分が与えられるギフトは何かを考えてみた。堀さんの数にはかなわないが、数年前から自分も積極的に「ありがとう」を言うようにしていると気づいたが、これがギフトだとは思わなかった。「ありがとう」の他にもギフトを与えられる人間になれるよう、精進していきたいと思った。
堀さん、ありがとうございました。
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