今回は、柏井壽:著「鴨川食堂」の続編「鴨川食堂おかわり」です。
今回も思い出の食を探してもらおうとやってきた客に振る舞われるおまかせ料理にお腹が鳴りました。やはり空腹時には読んではいけない本のようです。
今回探す食は、父親が作ってくれた「海苔弁」、おじいちゃんが孫のために作った「ハンバーグ」、亡き息子が和菓子屋の両親に内緒で食べていた「クリスマスケーキ」、トップモデルが貧しい子供時代に母親が作ってくれた「焼飯」、演劇をやっていた学生時代に食べた屋台の「中華そば」、一発屋で終わった歌手が若い頃に事務所の社長からごちそうになった「天丼」の6品。これを2週間かけて鴨川食堂店主で元刑事の鴨川流が現地で捜査して再現します。
2作目を読んで改めて感じたのは、鴨川食堂では過去と現在が交錯し、過去の味に触れた人々がそれぞれの未来を選択して店を後にするという読後感のさわやかさです。
思い出の味を探す客はいずれも「これからの生き方」に踏ん切りがつかない人たち。過去の記憶に強く残る食が自分たちの基点であったことから、失われたそれを再び食することで次のステージへの推進力を得て颯爽と店を出て行く姿が、まさにおいしいものを食べて店を出たときの満足感と重なりました。
ただ、今回はどことなく過去の食の掘り下げ方が前作より浅い感じがしたのは気のせいでしょうか。難なくさくっと見つけてきて再現してしまった感がありました。
だからといって「薄味」というのではなく、今回もたっぷり食べて「ごちそうさま」をした満足感(満腹感?)がありました。
さて、読んでいていつもお腹が鳴る鴨川食堂の「おまかせ料理」ですが、今回はこんな感じでした。まずは「ハンバーグ」に出てきたシャルドネの白ワインに合う春の料理。
長岡の筍と出雲のワカメの炊き合わせ、鱒の木の芽焼き、ウスイエンドウの卵とじ、蛤の白味噌グラタン、アサリと九条葱のヌタ、ポン酢と木の芽で和えたグジの細造り、塩麹に漬けた丹波地鶏の蒸し焼き、小鮎の姿寿司、山菜のフライ(フキノトウ、コゴミ、タラノメ、モミジガサ、ワラビ、シオデ)を抹茶塩か実山椒をつけ込んだウスターソースで。
冬の料理もありました。「クリスマスケーキ」に出てきた2段のお重に入った料理です。
上の段は、漬けマグロの山葵和え、生湯葉のお造り、練りごまをまぶしたタイの薄造り、出汁巻き玉子、グジの小袖寿司、大黒シメジと水菜のお浸し、菊花蕪の酢漬け、串に刺したウズラのつくねと蒸し海老、キュウリの板ずり。
下の段は、マナガツオの味噌漬けを焼いたもの、煮物の椀は堀川ごぼうと明石タコの桜煮と聖護院蕪とどんこ椎茸、大葉で包んだモロコの甘露煮、寒鯖の竜田揚げ、海老芋の素揚げ、青ネギを巻いた鴨ロース、白ネギを巻いた黒豚。
これにセコ蟹の炊き込みご飯と牡蠣豆腐の赤だしが付きます。
いかん。書き出していてもお腹が鳴りました。
お品によっては器の描写もあり、さぞや現物は見た目もすごいのだろうなぁと想像するのですが、帯にあった情報によるとこの物語がなんと2016年1月から連続ドラマ化されるのだそうです。
出演は鴨川流役が萩原健一、娘のこいし役が忽那汐里のようですね。ひるね役の茶トラ猫ももちろん出るのでしょう。NHK BSプレミアムで放送とのことですが、できれば「飯テロ」にならない時間帯でお願いしたいものです(笑)。
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