2019年4月29日月曜日

1311 まとまった休みが取れたらじっくり読みたいオススメ本(随時更新)

猫の介護と本人の体調不良等により更新ができてませんが、おすすめの本ですのでぜひ。

巻数が多い、1冊が分厚いなど、読了に少々時間を要する本をご紹介しようとしたらたくさんありすぎて、直近の大型連休に原稿が間に合わないことに気づきました。
ひとまず書名などを紹介し、徐々に加筆修正していきたいと思います。

とりあえずアマゾンのリンクを貼りますが、できれば本屋さんで探してみてください。思わぬ本との出合いもあるはずですよ。
なお、オススメに順序をつけがたく、ほぼ順不同だと思ってください。発行日も新・旧とりまざっております。

1.「華竜の宮」(ハヤカワ文庫、上下巻)上田早夕里・著



どこかのコラムで「プロローグだけで長編が1本書ける」と言われる作家だけに、濃厚な作品。
物語は、プロローグで地球の異変を察知した科学者2名が語り合う2017年からはるか先、彼らが予想した地球の異変(海面が250メートルも上昇し陸地が沈み海が拡大する現象)が発生、それが落ち着いた数百年後の未来の地球が舞台です。

人類は海での生活に体を適応させた海上民と従来の人類である陸上民に分かれ、海上民は海中にある災厄から逃れるために洋上を移動するため国に属さない集団も多いこともあり、陸上民から差別的な扱いを受けていました。
日本政府の外交官・青澄誠司は、アジア地域での両者の対立を解消すべく、海上民の女長ツキソメと接触を試みます。その間にも各国や国家連合などの思惑や暗躍が複雑に絡み合い、さらに地球の異変は終わりではなく再びやって来ることが判明。
だが、宇宙開発を怠った人類に残された手段は安全な土地を殻で覆ってその中で生活するか、再び人体改造をして海中で暮らすか。果たして異変までにそれらが間に合うのか・・・。
「華竜の宮」では、その異変が発覚するまで、青澄が外交官を辞めるまでが描かれます。

この続編にあたるのが「深紅の碑文」(ハヤカワ文庫、上下巻)です。
青澄が外交官を辞めた後、「華竜の宮」エピローグでさらりと語られている人類滅亡の危機「プルームの冬」に対処するまでが描かれます。

この合計4巻でひとつの物語が完成しますが、なんとなくさらに続編がありそうですし、2019年春現在、最初の大異変の頃を書いた物語の出版が予定されているようです。

最後まで息をつかせぬ展開で、長いとは感じさせずに読ませてくれます。

また、上田早夕里氏の「夢みる葦笛」(光文社文庫)もオススメです。短編集ですが、いろいろな「さよなら」の物語でしんみりきます。(冒頭の物語はやや乱暴なさよならですが。)







2.「図書館の魔女」(講談社文庫、全4巻)高田大介・著
「図書館」ときて「魔女」といえばラノベ風ですが、文庫本4巻合計で約8センチの分厚さを見れば違うことはお分かりかと。

物語はキリヒトと呼ばれる少年(13〜14歳くらい)が図書館の魔女と言われる人物に仕えるために都へと向かう場面から始まります。

王宮の奥にある「高い塔」(図書館)の主・マツリカ。キリヒトが「まだ女の子じゃないか」と驚くほどの少女マツリカは、耳は聞こえるが声が出せない。そのため手話で会話するのですが、幼いわりに老獪な話ぶり(毒舌も強い)で、彼女の持つ知識は図書館の蔵書全てを網羅するだけでなく、それらを関連付けて引き出す能力に長けていました。その能力を駆使して隣国との争いを回避するべく自ら赴き、また、ミツクビと呼ばれる魔術師らが放つ刺客に何度も命を狙われたりと活劇的な要素もあります。

しかし、この分厚さをもってしても、マツリカはもとよりキリヒトやその師匠の出自もはっきりしません。
ちょっとネタバレですが、最後はある人物の新たな出発があり、まだまだ終わらない物語のようです。

この続編である「カラスの伝言(ことづて)」上下巻が出ているのですが、これに至っても、ながーーい伏線の様を呈しています。ここまででもまだ「起」であって、「承」にすらたどり着いてないんじゃないかと思わせます。

著者は言語学者さんだそうで、そのキャリアに物語を創造する力が加わるとこんな強烈な作品が生まれるのかと衝撃を受けました。使われている言葉は普通なのに、読んでいるこちらの脳内にイメージを鮮明に浮かび上がらせてくれるほどでした。

特に印象的だったのは、第1巻の最初のほう、「図書館の魔女」と言われる人物に会うために、キリヒトと呼ばれる少年が図書館の塔内の階段を登っていくシーンでした。階段や各階の様子はもとより、特に頂上の窓に現れる月がまるで登場人物と一緒に見ているかのように鮮明に脳内で映像として認識していました。

知で闘うマツリカとその周囲の人たちの活躍を楽しんでください。

余談ですが、あとがきでどなたかが「ボーイミーツガール」のお話だというようなことを書かれていたのですが、「異議あり〜!」と言いたいっ。
ネタバレになりますが、4巻の最後でマツリカがキリヒトに主従関係を解くようなことを示唆しますが、このまま主従関係で物語が進行して欲しいなぁと個人的には思います。



3.「眼球堂の殺人」ほか(講談社文庫、「堂」シリーズ全7巻)周木律・著
以前紹介した「猫又お双」シリーズの作者による「堂」シリーズ。ジャンル的には「屋敷もの」ミステリーでしょうか。毎回、間取り図が出てくるので「間取り図もの」と言うべきかも。間取り図大好きな方、必読です。

第1巻「眼球堂の殺人」は、著名だけど超変人な数学者と彼に密着している女性編集者が眼球堂と呼ばれる場所に招待される(女性は勝手にくっ付いて行っただけですが)ところから始まります。その建物内で殺人事件が起きるも腑に落ちない場所で殺され、しかも招待主もモズのはやにえのように庭のオブジェに串刺しにされてしまいます。
物語は一連の事件を女性編集者がフィクションとして書き上げた本であったという展開で終盤を迎え、実は彼女は・・・と正体(正しくはその一部?)が明かされて、2巻以降の物語に見え隠れしながら現れます。

以後、「双孔堂の殺人」「五覚堂の殺人」「伽藍堂の殺人」と続き、「教会堂の殺人」では作家による主要登場人物の整理とも思われるような殺人が立て続けに起き、残り2巻「鏡面堂の殺人」「大聖堂の殺人」で締めくくられます。
実は、最後の2巻は2019年の大型10連休のために取っておいて、まだ読了してないんです(汗)。
加えてミステリーはどこをどう書いてもネタバレになりそうで紹介が難しいです。でも、オススメです。

4.「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」(宝島社文庫、現在5巻まで刊行)山本巧次・著
「このミス」大賞の選考時に、続編ができそうだということであえて大賞にせず隠し球賞にしたという逸話のある作品です。

祖母から相続した古家が江戸時代の家につながっていて、ひょんなことから江戸の犯罪捜査に関わるようになった「おゆう」こと関口優佳。現代にいる大学時代の友人・宇田川聡史が民間の科学分析ラボに勤めているのを幸いに、江戸の証拠を分析してもらい事件解決へとつなげます。

荒唐無稽に見えるけれど、江戸の現場での証拠採取の困難さや、分析結果をそのまま伝えるわけにはいかないところに四苦八苦する様子が興味深いです。殺人現場でルミノール反応を部屋中に展開して犯人はもとより味方の岡っ引きたちまでうっかりビビらせるわ、挙句にドローンまで飛ばすわと、やりすぎ感も読んでいて楽しいところです。

※執筆時現在、アマゾンでは第1作目の扱いが無いようです(下記リンクは5作目です)。版元にあるかどうか。お近くの図書館も当たってみてください。


5.「れんげ野原のまんなかで」「花野に眠る」(創元推理文庫)森谷明子・著
街のはずれにできた図書館に勤める司書の今居文子の周りで起こる小さな謎を解く物語です。この2巻で完結でしょうか?

舞台が図書館ですから、本も主役。来館者が探す本、読み聞かせ会で取り上げる本など、実在の本がたくさん出てきて、つい読みたくなります。

この中に出てくる「ある小馬裁判の記」を図書館で借りてみたのですが、ジュブナイル扱いなので軽い気持ちで読み始めたら、その内容が大人でも考えさせられる内容でした。
こちらも必読です。このシリーズの雰囲気を味わうためにも図書館で探して借りてみてはいかがでしょうか?



6.「ジェノサイド」(角川文庫、上下巻)高野和明・著
駅のホームで病死した父親が残したメッセージは息子に自分がやっていた新薬開発を引き継いで欲しいというものだった。資金500万円と賃貸アパートの一室。そこから何者かに狙われることに。
一方、海外を舞台に4人の兵士が集められ、ある地域に発生した疫病を封じるためそこに住む民族の殲滅を命じられる。ところが、これは人類にとって変わる危険性のある新しい知性体を民族もろとも皆殺しにするのが目的だった。

一見何のつながりもなさそうな2つの出来事が重なり合い、ラストに向かってひた走ります。架空の難病とその薬の開発の様子にリアリティを持たせる緻密な描写は、その方面の知識がなくても物語の中に没入させてくれます。

息もつかせぬ展開に一気読みの危険性大ですので、飲み物の準備など済ませてから挑んでください。
余談ですが、その新しい知性体が「猫みたい」な顔をしているらしいのですが、どんな顔なんでしょうか。想像がつきません。



7.「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬社文庫)内館牧子・著
京大医学部現役合格の弟と比べて二流大学卒業で就職も決まらず、彼女にも振られた伊藤雷。「源氏物語の登場人物はこんな病気で、我が社の薬を服用するならこれ」という製薬会社のイベントのバイトを終え帰宅する途中、あるはずのない路地に踏み込んだ途端、雷に打たれ気絶。気がついたらなんと源氏物語の中にタイムトリップ?
いやいや、実在しないからタイムトリップではないけれど、そこは弘徽殿の女御の邸宅の庭。手には製薬会社のバイトでもらった源氏物語のあらすじ冊子と登場人物ごとの薬の試供品。ここから高麗帰りの「陰陽師」として生活することに。

作者は弘徽殿の女御のファンだそうで、それで彼女を軸に据えたとも言えますが、光源氏の恋の相手ではなく、登場回数も目立って多いわけでなく、作者として動かしやすい人物だったのではないでしょうか。タイトルは映画「プラダを着た悪魔」へのオマージュだそうです。弘徽殿の女御のキャラを考えるとぴったりかと。

物語は桐壺から須磨明石の項まで。このあたりまでならなんとか大体読んだことがある方が多そうですし、オリジナルの源氏物語の裏で弘徽殿の女御が何をしていたかの考察めいていて面白いです。

果たして主人公は元の世界に戻れるのか。



8.「遺跡発掘師は笑わない」(角川文庫、執筆時現在9巻刊行)桑原水菜・著
9.「星のダンスを見においで」(創元SF文庫、全2巻)笹本祐一・著

10.「翼を持つ少女」(BISビブリオバトル部シリーズ)(創元SF文庫、上下巻)山本弘・著

11.「一八八八 切り裂きジャック」(角川文庫)服部まゆみ・著
12.「村上海賊の娘」(新潮文庫、全4巻)和田竜・著
言わずと知れたベストセラー本ですが、あえてリストアップしました。
第4巻の解説(日本史研究者・山内譲氏)によりますと、著者は「史料」にこだわり、実在の人物を動かしているとのこと。確かに「主要参考文献」だけで文庫本4ページも費やしていて、さもありなんという感じがします。

以下、山内氏の解説からの引用です。
主人公景のまわりをほとんど実在の人物で固め(ただし源爺や留吉は非実在)、それらの人物たちは、ほぼ史実のままに行動する。どうやらしっかりした歴史背景と間違いのない人間関係の中で主人公景を縦横無尽に活躍させるのが和田流のようである。きちんとした時代的枠組みと、景という女性の超時代的な活躍が巧妙に組み合わさっているのが本書の特色と言えよう。
(中略)
村上海賊の活躍を女性を中心に描こうという構想を持って、主人公となる女性を史実のなかで探したが、なかなか見当たらなかった。そのようなとき、村上氏の系図の中に、武吉の子として名前のない「女」とだけ記載されている人物を見つけ出した。このとき、これで物語が書けると確信した、というのである。
実在の人物が実際にどう行動したか、どんな会話をしたかなど史実をもとにしたとしても創造するのは架空の物語を作るより大変そうに見えるのですが、さらに実在したとはいえ、ただ「女」と記述のある人物を中心に据えて、あたかもそうであったかのように生き生きと活躍させる筆致に驚嘆ぜざるを得ませんでした。

ということで、あえてご紹介。未読の方はぜひ。
13.「花窗玻璃 天使たちの殺意」(河出文庫)深水黎一郎・著
14.「推定脅威」(文春文庫)未須本有生・著

15.「スカイ・クロラ」シリーズ(中公文庫)森博嗣・著


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