2015年2月3日火曜日

1025 本屋で探検14〜「この闇と光」(服部まゆみ:著)

「不定期に本屋さんに行き、知らない作家の本を少なくとも1冊は買う」というルールに則って紹介する第14回目。
今回は、服部まゆみ・著「この闇と光」です。

なお、本文庫は2001年8月に刊行された文庫版を底本に、2014年11月に改版として発行されたものです。


森の奥に囚われた盲目の王女・レイアは、父王の愛と美しいドレスや花、物語に囲まれて育てられた・・・はずだった。ある日そのすべてが奪われ、混乱の中で明らかになったのは恐るべき事実でーーー。今まで信じていた世界そのものが、すべて虚構だったのか?随所に張り巡らされた緻密な伏線と、予測不可能な本当の真相。幻想と現実が混ざり合い、迎えた衝撃の結末とは!?至上の美を誇るゴシックミステリ!(カバー裏より)

中世の架空の国に住む王女の物語だと思って読み進めていました。
王女レイア(最初は5歳くらい)が世話係の女から罵声を浴びせられたり、蹴られたりなど、虐待に次ぐ虐待の表現に読書スピードは弱まり、何度も読むのをやめようかと思ったことか。

やめるか読み続けるか。その判断をするためにズルをして少し先を読みました。
その場面は、幽閉されていた「別荘」から逃避行するのか、レイアが初めて車に乗り外に出るところでした。ある場所で降ろされて一人取り残され、やがて父母と名乗る人が現れて・・・。

これ以上はクライマックスとなりネタバレになりますので控えますが、「え?え?えぇ〜〜!」という展開になります。これはうなりましたね。どんでん返しとはこういうことを言うのかと。それもさらなるどんでん返しがありまして、それについては(王女のキャラクターに絡む設定なのですが)全く読者に気づかせないところがすごいなぁと。
そこで、飛ばした部分に戻り、安心して最後まで読み直しました。

さて、タイトルにもある「闇と光」ですが、主人公の王女レイアは幼い頃に事故で失明したこと、囚われの身から開放される(?)ことなどを暗示しているかのようです。
盲目のレイアは、おぼろげながら色やものの形は記憶しています。一緒に囚われている父王の助けを借りて、言葉と視覚をイメージづけていくシーンが出てきます。
その後、手術で視力を回復した「王女」が自分がイメージしていた以上に美しい、光にあふれた世界を描写していくシーンがあるのですが、次第に「見える」ことに慣れてくると初めて見たときの感動が段々色あせていく様子の描写が印象に残りました。

最初は幼児虐待な感もありますが、闇の世界から光のある世界への変化の描写や、どんでん返しの妙をぜひ味わっていただくことをオススメします。

なんともすごい描写力を持つ作家さんですが、惜しくも2007年に58歳で亡くなっております。他に「罪深き緑の夏」「レオナルドのユダ」など数作品あるとのことですので、読んでみようかと思います。

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