2012年3月4日日曜日

135 四角大輔さんのトークライブを聴いてきた

2012年2月26日(日)、東京・代官山にて開催された「四角大輔×安藤美冬ノマド対談Vol.2 1日集中トークセッション・自分プロデュースで人生を創る方法」を聴講した。 
四角(よすみ)さんの著書「やらなくてもいい、できなくてもいい。」を読み、グッときたところにこのイベントの告知があり、いつものように速攻申し込んだ。日曜朝10時から午後4時までのイベントにもかかわらず、席はすぐに満員に。当日は20代の学生さんとおぼしき人たちが会場の7割以上を占めていた(もの書き写真堂の直感調べ)。 

イベント内容 
  1. 四角大輔トークライブ「会社員時代から実践していたオンリーワンの人生をつくる方法」 
  2. 安藤美冬トークライブ「たった1年で営業しないワークスタイルとメディア露出を可能にした方法」 
  3. 四角×安藤トークセッション「ノマド/無名の個人がブランド人になる方法」 
  4. Q&Aコーナー 
このなかから、やはりいちばんグッときた四角大輔さんのトークライブの様子を紹介したい。

■四角さんの経歴・現況など



四角大輔さんの経歴・会社でのエピソードは上記の書籍に詳しいが、レコード会社で平井堅や絢香などのプロデュースを手がけた人だ。会社員時代はとても非常識だったそうだ(このエピソードも本に詳しい)。今回のイベントのように人前で話したことがほとんどなかったとか。 

現在は、約15年の会社勤めを辞めたのち、あこがれだったニュージーランドの永住権を取得して、2010年からニュージーランドで7ヶ月、東京で5ヶ月という生活をしている。

移住に際して、使っていた荷物の7割以上を捨て、スーツケース3個、バックパック2個だけを背負って移住。
ニュージーランドに渡った当初の4ヶ月は、キャンピングカーを購入してキャンプ地で過ごしながら、家を100軒以上見て回り、「湖畔に住む」という夢が叶う物件を見つけた。

「周りの物も、会社員時代の名刺5000枚も全部捨てた。でも、人は本当に大事なものは捨てないもの。また、器を空にすると、そこにどんどん新しいものが入ってくる」 
「ニュージーランドではあきらめなければならないものもあったが、そのかわりに得るものもあった」

例えば、
  • 住まいを決めた場所はケータイが圏外だった。だが、ケータイの電波を嫌う野鳥がたくさん集まっているところだった。
  • 水道が来ていなかった。だが、天然ミネラル水が豊富で何も不自由は感じなかった。


ちなみに、ブロードバンドは来ていたので、ニュージーランドにいても日本とのビジネスに不自由はなかった。
現在は、フライフィッシングを中心としたネイチャー系雑誌等での執筆をメインに、ときどきこのようなイベントに参加する。

「ちゃんと人前で話すことができるようになったのは、去年くらいから」という四角さんだが、トークライブはスムーズに流れていった。

■ナンバーワンではなく、オンリーワンに
人は生まれながらにして皆アーティスト。ナンバーワンになるのではなく、オンリーワンを目指す。
そのための4つのキーワードが、
  • インナーヴォイス
  • マイクレド
  • ウルトラライトマインド
  • オリジナルクリエーション
「本田直之さんの言葉に、レール無き無名の個人の時代というのがある。会社も国も守ってくれる時代ではない今は、自分で自由に人生をデザインできる時代、一億総アーティスト時代だと思う」

国や会社が守ってくれないから、かえってチャンスだということか。ここのところは、先日の堀正岳さんの講演にとても共通するところだったので興味を持った。

「有名アーティストでさえ、誰もが最初は無名の個人」

当たり前のこの言葉がとても刺さった。確かに。

ただ、「自由に人生をデザインする」といっても、自由というのは自己責任も抱える。そのためにはサバイバル能力も必要となる。ここで四角さんの言うサバイバルとは、荒野で自給自足でやっていく能力ではなく(「そういうのも必要ですし、僕はそれも教えられますが」と四角さん)、精神的なサバイバル能力なのだ。それを引き出すのが先に挙げた4つのキーワードから導かれる4つのルールだ。

  1. 自分の心の声を聞く
  2. ブレない自分軸をもつ
  3. 自分を制約から解放し、身軽に、柔軟に
  4. 自由が独創性を生む

自分の心の声を聞くというのは、自分が何を求めているかを追求するということ。周囲の意見ではなく、自分がどう思っているか、どう感じているのか、内なる声に耳を澄ます。
ただ、それはすごく小さな声で、油断していると自分自身が大声で否定してかき消してしまう。
だが、これが聞き取れたらブレない軸ができる。

多くの人が、周囲の声を聞いて(惑わされて)、自分の声を聞いていない。そんな自分をいかにして解放するか?
そのためにも軸が大事。これがないと、いろいろなもの、例えば資格を取ったり、「常識」で自らを縛ったりして「荷物」を背負ってしまう。最初はそんなに大きな荷物でなくても、少しずつたまって重くなり、自由が奪われてしまう。

身軽に、柔軟に生きるにはどうするか?それは、一生変化し続けること。そうして柔軟性が生まれれば、独創性も生まれる。
そのためにセルフプロデュースを導入する。これは四角さんがやってきたアーティストプロデュースと同じ手法なのだという。

話はそれるが、サン・テグジュベリの「星の王子様」の一節で「肝心なことは目に見えないんだよ」というのが好きという四角さん。
また、講義(近年、大学で講師をしている)やセミナーなどの冒頭で、「今日はクリエイティブになろう」と、オノ・ヨーコの言葉を引用して呼びかけるそうだ。
見たまま、聞いたままをノートやパソコンに書き留めるのではなく、感じたものを書き留めようと呼びかける。思考は他の人と同じであることもあるが、「感じる」というのは人の数だけある。だからこの「感じる」を優先しようという。それが独創性を生むことにつながる。

■セルフプロデュース
アーティストプロデュースは、セルフプロデュースにも適用できる。そのアーティストプロデュースに必要なことは4つ。
  1. アーティストを正しく理解する
  2. アーティストの長所やオリジナリティを見つける
  3. アーティストの長所や独創性を徹底的に伸ばす
  4. アーティストの長所や独創性をそのまま正しく世の中に発信する


「人の中には大きな宇宙がある」と四角さんは考えている。アーティストを正しく理解するというのは、アーティストの内側、アーティストの「自分史」を知ること。アーティスト本人は自分の長所やオリジナリティに気づいていないことが多いので、彼らを理解したうえで、それを見つけてあげる。彼らは自分の背中が見えない状態なので、アーティストの後ろに回って、その背後にあるものを教えてあげるようなイメージ。
だが、四角さんは短所の修正をしない。それを直すほど人生は長くないから。だから、短所は脇に置いておいて長所を徹底的に伸ばして、そのアーティストの個性とする。

アーティストを徹底的に理解したら、世の中を見渡してアーティストを正しく発信する方法を探す。他と競合しない「空いている席」、しかもそのアーティストにぴったりの席を見つける。
つまり、四角さんはマーケティングをしない。というより、マーケティングは後なのだ。まずは、そのアーティストに合ったマーケットを探す。世の中がどんな音楽、アーティストを求めているかを探って、そこにアーティストをはめ込むことはしない。

「自分がやった究極のマーケティングは、自分プロデュース。つまり、自分が何をしたいかで決めた」

自分が好きかどうかをもとにアーティストにこだわり、プロデュースしてきたのだそうだ。そのせいでだいぶ社内の反発もあったそうだが。

四角さんが手がけたアーティストは、ジャンルがばらばら。でも、唯一の共通点が「声質」。歌のうまさ、外見などは後で何とかなるが、声質だけは持って生まれたもの、そのアーティストのオリジナル、独創性なわけだ。
一般の人でも、自分の中にある究極のオリジナリティを見つけることができる。見つけたら、そのオリジナリティと心中するくらい、とことん突き詰める。そのためにも、自分の心の中の小さな声を聞き逃さないようにする。

■四角式ウルトラライト仕事術
まず、ウルトラライトとは?
登山における概念で、どれだけ最小限の荷物にするか、また、それぞれのアイテムの重さをいかに軽くするか、ということ。登山用品のメーカーも品目ひとつひとつについて、どれだけ軽量化を図れるか日々研究しているのという。

四角さんが山旅(7日間くらいの登山旅行)で持って行く荷物は、絞りに絞っても約300点。これを毎日背負って移動する。普通ならこの旅程だと20kgを超えるのだが、四角さんは「20kg超えるときついので、だいたい17.5kgにしている」。
そして、この荷物は、泊まる先々で毎日開梱を繰り返す。「毎日がリセット&リビルド。毎日が引っ越し状態」。
だから、いかに軽量コンパクト、最小限のアイテムにするかが課題だという。
そして、これが仕事にも応用できるのだそうだ。もちろん仕事で使う道具のことではなく、以下のような考え方のことだ。

1 True to Yourself
自分を信じて、他人に合わせない。自分の内なる声を信じて進む。

2 Throw Away
20代は特に「捨てる覚悟」を。四角さんもレコード会社の社員時代、もの、しがらみ、いろいろなものを捨てる覚悟をしたら急に楽になったそうだ。その捨てるものの中には「仕事」も入っていた。

3 Focus On
何でもできる人を目指すのではなく、「自分はこれだけはできる」というものに集中すること。何かに集中することが、すべての軸になる。
まず自分にできることをリストアップした。そのリストをみると上位10位が「あいさつ」など、人として当たり前のことだった。四角さんがいた業界はそんな当たり前のことができない人が多かったので、それが強みになった。

4 Real Brain
本当の味方はひとりいればいい。周囲のすべてを味方にすることはない。

5 Positive Escape
ポジティブな逃避というと変な感じがするが、「いざとなったら今の会社を辞めて、やりたかったことをやればいい」と、開き直りではなく、前向きに考えること。四角さんは教師になりたくて教員免許を取っていたことと、釣りが大好きで、さらにいつかはニュージーランドで暮らしたいと考えていた。これが心の支え、Positve Escapeとなった。これがあると「クビになったら、給料下がったら困る」という思考から脱出できるという。

6 Active Rest
元々の意味は、激しい運動をした後に軽い運動をすること。例えば、マラソンをした翌日にしっかり休むのではなく、軽くランニングするほうが疲労回復が早いそうだ。
これは仕事にもあてはまる。四角さんも超多忙で心身ともに壊れかけ、休職寸前まで行ったことがある。違うセクションへの異動がアクティブレストとなり、休職を回避できた。

7 Nomadic Spirit
ノマドというと「会社・自宅から出てカフェなどで仕事をすること」などと解釈されているが、四角さんは「場所にしばられない生き方」と捉えている。会社員時代から、自分の席にいると何もしたくなくなって困ったそうだ。それで会社を出て外で仕事をしていた。今はニュージーランドというあこがれの場所に住みながら、日本での仕事をしている。その場所じゃないとできない、ということはない。さらに場所にしばられないメリットとして、
「人は、1カ所から移動すると変化する」
8 Minimum Life Cost
賃金が下がったら生活の質を落とすのではなく、最低限の生活費を完全に把握して「これだけあれば生活できる」という安心感を得る。

四角さんの会社員時代は歩合制だったので、仕事の出来具合で(それもかなりの金額で)上下する給料に一喜一憂したり、贅沢や極貧生活を送るのが嫌だったので、どれだけあれば自分が満足できる生活ができるかを把握した。
「家計簿を半年つけて、それを徹底的に分析した」
すると、「これだけあれば暮らせる」というラインがわかり、サラリーマンを辞めることが怖くなくなった。
「収入に合わせて生活するのではなく、最低限の生活費で生きていけるようにする」
四角さんはブランドものに興味がなかったことと、ものを最後まで大事に使う主義らしく「車は同じものに13年乗った。最後は雨漏りして買い換えざるを得なかったのだけど」というくらい使い込む。
でも、そういうことは苦ではない。なぜなら「すべて自由のためだから」。

9 Extreme Time Management
レコード業界は宵っ張りな業界だが、四角さんは夜更かしが嫌い。そこで、誰もやらない早朝レコーディングをするなど、今で言う朝活を10年以上前に実行していた。そのせいで人から飲みに誘われたりしなくなったが、四角さんは飲み会が嫌いだったので逆に幸いしたそうだ。

10 Healthy Management
自分にとって究極のインフラは「身体」。これを壊しては元も子もない。
身体を健康に保つためにはアスリート並みの健康管理が必要と考え、四角さんは「健康、栄養、トレーニングのオタク」になるほど徹底的にマネージメントしている。

11 Lifestyle Design
仕事よりライフスタイルを優先する。理想は、趣味だか仕事だかわからないけど、とにかく必死にやるという状態。「趣味」と「複(注:副ではない)業」を合わせる。
四角さんは会社員時代、プロデューサーをしながら大学講師であり、釣りのプロだった。趣味と仕事(複業)が混在している状態。
こうしていることでわかったことは、「勝ち負けにこだわらない」「ライバルを作らない」「いちばんじゃなくオンリーワン」ということだった。

12 Back to Basics
基本というのは、「人として当たり前」ということ。先に挙げた「あいさつ」などがそう。
「すごい人というのは、当たり前のことがちゃんとできている人だと気づいた」
この人として当たり前のこと、あいさつや時間を守るといったことができなくなると、「ああ、壊れかけている前兆だなぁと解る」。ニュージーランドに移住してからは「空を見ていない」というのも前兆になった。これらの前兆を知っておくと、「壊れはじめている」というシグナルになるので予防ができる。

■将来の夢
「人類すべてアーティスト。名前だけで世間を渡っていけるようになる時代がくる」という四角さん。
夢は、アーティスト・ラボを作ること。そこは、ミュージシャンだけでなく一般の人のアーティスト性を引き出す場所にしたいと考えている。

四角さんは最後に、アメリカ・フォード社創業者の言葉を紹介して、トークライブの締めとした。

「あなた自身の個性を探すことを続けること」


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