2011年9月30日金曜日

0081 【書感】クラウド時代のハイブリッド手帳術(倉下忠憲・著)




このエントリを書いている時点で今年もあと3カ月を残すのみとなりました。
ですが、来年の手帳が決まりません。さてどうしたものか、というタイミングで倉下忠憲氏の「クラウド時代のハイブリッド手帳術」が出版されたので購入しました。

読了後、手帳は決まったのでしょうか?

結論としては、「まだ」です。
そもそも、この本は手帳を決めるために手に取ったものではなかったことと、倉下氏も本の中で書いていますが「この手帳がいい」という指南本ではないのです。
「じゃあ、なんで読んだの?」と問われたら、その答えは、「先日参加したクラウドノート術での倉下氏の話がツボったから」。

加えて倉下氏の「Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング」がもの書き写真堂にはかなりのお役立ち本だったので、今回の本もハズレなしと直感したからでした。



↓こちらもおすすめ 「Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング」



「クラウド時代のハイブリッド手帳術」はまさに当たりの本だったのですが、当たり所は倉下氏の意図するところとズレているかもしれません。
以下、その当たり所、つまりグッときたところを挙げていきます。

★一番ツボったのが手帳とは関係ないところ
この本のなかでいちばんグッときたのが、Chapter5「ハイブリッド手帳」によるセルフマネジメント。ほとんどの付箋がここに集中していました。
さらに一番ツボったのが、そのなかの「目標設定」に関する部分です。ページ数で言うとP172からP182まで。ここにグッときたものがぎゅっと詰まっていました。

  • 目標はトップダウンで決めない。ボトムアップで定期的に(少なくとも1年に1度)見直す。
  • 目標に縛られない。目標はあくまで自分が前進するためのツール。
  • 10年とか長いスパン(遠い先)の目標は決めない。決めても3年より短く。できれば1年とか1カ月。
一見、手帳とは関係なさそうにないことが並びましたが、この謎は読み進んでいくうちに解決します。では、上記の部分について4項目にわけてみていきます。

1 トップダウン方式の目標管理の限界
目標は大きなものを立ててから細分化し、具体的な行動に落とし込んで実行する、というトップダウンがよく言われていますが、はたしてこれが汎用的なのか?というのが著者の投げかける問いです。

その背景に、

  1. 達成したい大きな夢や目標が無い人もいる。(無理に目標を持てというのはいかがなものか)
  2. 立てた目標が本当に自分のやりたいことかどうか不明瞭。(人は感情に左右されるので、そのときの気分でモチベーションの続かない目標を立ててしまうことがある)
  3. 計画の不完全性。(1日や1週間のレベルですらうまくいかないのに、1年後、10年後の目標となったら?)
という3つを上げています。
そして、
「10年も先の計画など、ほとんど当てずっぽう以外のなにものでもないことがわかります。」
「『将来の大きな目標を立てて、それを細分化し、行動する』という方法論を単純に実行すると行き詰まる可能性が見えてきます。」
と、締めくくっています。

これを読んで、いろんな意味で膝を打ちました。ロングスパンの目標を無理して立てなくてもいいんですね。行動できるレベルまで落とし込めなかったのはそういうことだったのかと。

もの書き写真堂はこれまで、「絶対ブレない「軸」の作り方」(南壮一郎・著)「夢をかなえる10の質問にあなたは「YES」で答えられるか?」(ジョン・C・マクスウェル著)などを読み、一度立てた目標を死守しようとしましたが、それが失敗した原因はここにあったのかもしれません。



↑この2冊もモチベーションをあげてくれた。

2 目標とは前進するためのツールにすぎない
ちょっと長いですが、この項から引用します。
目標はツールでしかありません。セルフマネジメントのツールです。何のためのツールかといえば、自分を前に進めていくためのツールです。(中略)しかし、時としてその関係がおかしくなるときがあります。ツールであるはずの目標が自分の上に存在して、それを達成できないとダメだと思い込む状況です。ツールを使っていたはずが、いつのまにかツールに使われているわけです。もともと、自分を前に進めるためのツールでしかないのに、目標が達成できなかったからといって、自己嫌悪に陥るのは、おかしな状況です。

目からウロコでした。目標はツールだったのですね!
もの書き写真堂、思いっきり使われてるかも・・・。
計画を立てて実行してうまくいかなくても、まったくゼロというわけではないはずです。この結果を踏まえて、定期的な見直しをして新たな目標を立てればいいだけなのです。当たり前だけど、目標をツールと見た場合には、その定期的な見直しのニュアンスも変わっていきそうですね。

ページが前後しますが、この言葉も覚えておきたいですね。

「目標やビジョンが持つ力は活用するけれど、それに縛られすぎない」というスタンスが望ましいわけです。(P177)

3 「遠すぎる目標」は立てない
本書に書かれている倉下氏の目標の立て方が、とても参考になります。
  • あまり遠すぎる目標は立てない。10年先の具体的イメージはほとんど持っていない。
  • 今日という日から遠ざかるほど、目標は大雑把なものにしている。
  • 目標と具体的な行動について考えるのは、3年より短いスパン。
  • 具体的になるのは、1年、あるいは1カ月という単位。
  • 毎年、1年を振り返り、次の1年の計画を立てる。
この最後の振り返る・見返すという作業が、目標と付き合っていく上で重要なんだそうです。
最初のうちはあれもこれもと目標を詰め込み過ぎるので、結果は悲惨なことになります。これはもの書き写真堂も痛いくらい実感しているところです。

ですが、見返してみて実践できたことを確認すると「なんとかできるかもしれない」レベルの目標を設定することが可能になります。倉下氏も言及していますが、これはかなり困難な作業です。
それでも、自己嫌悪に陥ったり目標を放棄するより、はるかにいいはずです。

4 「目標」を形に残す
自己嫌悪や目標放棄とならないためにも目標は定期的に見直そう、と本書は続きます。
そのやり方が、トップダウンから始め(目標の設定)、ボトムアップで戻ってきて(実績の確認)、そこから再びトップダウンを行う(目標の再設定)、というものです。P182に図解がありますので、それを見てもらったほうがわかりやすいですね。

そして、この作業を行うためには、目標を形として残しておく必要があります。ここで手帳をはじめとするツールの登場なのです。最初の謎の答えがこれです。
つまり今までの3つが伏線なのです。でも、これだけで本が書けそうなくらい主役級の伏線なんですけど。
本書では、次の項からそのツールの解説が始まります。

だが、そこに移る前にもうひと伏線あります。

目標は自分を「前」に進めるためのツールですが、ときには自分にとっての「前」がどちらかなのかを知る必要があるといいます。確かに自分用のコンパスあるいは基準点がないと、前に進んでるのか後戻りしているのか分からなくなります。

それを確認するには「後ろ」を見ることです。自分がいままで辿ってきた道を振り返れば、これからどういう方向に進むべきなのかが見えてきます。こうした役割を担うのが日々の記録を残すライフログメモです。(アンダーライン:もの書き写真堂)

ライフログ、キタ〜〜!という感じですね。ライフログメモの具体的な方法はこの直後の項に出てきますので、ぜひ本書で確認してみてください。

他にもチャプターごとに、Weeklyプランナー、Dailyタスクリスト、各種メモなどの使い方が具体的に書かれていますので、試してみて自分に合った方法を選ぶのもいいかもしれません。

・・・と、わずか10ページほどを紹介するだけでこのボリュームになりました。他にも紹介したいところがありますが、それは来年の手帳選びの顛末を書いたエントリで取り上げたいと思います。

最後に、「倉下さんも同じことを感じていたんだ」と思ったところを引用しておしまいにします。

あまり意識されることはありませんが、アナログツールは「見返しやすい」という特徴もあります。(P25)
このように綴じてあるとパラパラと読み返すことができます。1ページずつかなりの速度でめくっていくことができます。いずれ技術的な進化が進めば、デジタルのデータでもこれと同じようなことが実現できるはずです。しかし、今のところ、こうした読み返しはアナログのツールの方が得意です。(P211)
iPadのページめくりの遅さにイラっと来て、自炊した本を買い直したのは内緒です。

【送料無料】クラウド時代のハイブリッド手帳術
↑今回は楽天から購入したので、こちらも。


【書感とは?】
もの書き写真堂の造語。
書評と言うにはおこがましいので、本を読んだ感想と実践してみたことなどを書いた記事のことを指します。
書評と感想の間くらい。「所感」にかけています。

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