毎年、お正月になると思い出すのが「ばぁちゃんの雑煮」です。
母方の祖母。
年末年始は必ず祖母宅に行き、総勢十数名が正月の食卓を囲みました。
祖母の雑煮は北海道ではごく普通の角餅にしょうゆ味。
中に入っていた具もほぼ普通だったと思います。三つ葉とかなるとの薄切りとか。肉は・・・入っていたかどうか、記憶にありません。
というのも、ある具材がとても強烈で記憶が吹っ飛んでいるためです。実は三つ葉となるとも「普通なら入れるよね」と、脳の作り出した偽りの記憶かもしれません。
しかし、祖母にしてみれば「それ」を入れることは正月最高の贅沢だったのだと思います。
当時、当方が小学校3,4年生くらいだったからン十年前の話ですが、その当時でもたぶん安い物ではなかったはずです。
食卓に着いたみんなに配膳された雑煮は、白い餅が透明感のあるしょうゆ味の汁につかっていて「それ」が見えませんでした。祖母がお椀に盛りつける際に、餅を最後に投入したからでしょう。
その餅にかぶりつこうと箸で餅のカドを持ち上げると、ちょうど布団をめくるような状態になり、下のものが見えました。
正確に言うと、餅の裏側が目に入りました。
もっと正確に言うと、餅の裏側に付いた無数の「それ」が一斉にこっちを凝視していました。
それは、さながら赤目なうえに眼球を充血させた目玉の一群でありました。
小学生だった当方、一瞬固まったのち、蓋をとじるように餅をそっと元に戻しました。
「無数の」というのはおおげさですが、それくらい餅の裏にびっしりと付いた、加熱されて赤白くなったイクラは強烈でした。加熱のせいで充血したような白目部分と、瞳のような赤目部分がくっきりと現れていました。
「ばぁちゃん、正月だから奮発して入れたんだろうなぁ」と成人してから思いましたが、これがトラウマなのか、それ以来、イクラが苦手で食べられません。生でもです。
あの時の雑煮がどうなったかと言いますと、残したら怒られるので格闘しました。
しかし、その食感がゴムボールをかんでいるように弾力があり、なかなかつぶれません。たぶん丸呑みしたと思うのですが、最後まで食べたという記憶が欠落しているので実際どういう展開になったのか不明です。
結論。
イクラを雑煮に入れて加熱するのはいただけません。まさにいただけない、食べられないです。
せめて盛りつけの最後のトッピングにしましょう。
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