今回は、上橋菜穂子・著「獣の奏者 I 闘蛇編」です。
以前、インタビュー記事を見つけて気になっていた作家でした。
あっと、上記の記事は途中まで読んでウィンドウを閉じてください。後半に「獣の奏者」のネタバレや作者の解説などが入っていますので、本を読み終わった後にチェックすることをオススメします。
作家は文化人類学者でもあり、文庫カバーの紹介によるとオーストラリアのアボリジニを研究しているのだそうです。
国際アンデルセン賞は、長らく子どもの本に貢献してきたと認められる現存する作家および画家の全業績に対し2年に1度贈られるもので、小さなノーベル賞、児童文学のノーベル賞と言われているそうです。日本の作家としては1994年のまどみちお氏以来2人目。(他に日本人画家2名が受賞しています。)
(参照元はこちら)
「作家の全業績に対し」というだけに、単行本カバーの略歴を見ると「精霊の守り人」で野間児童文芸新人賞および産経児童出版文化賞、「狐笛のかなた」で野間児童文芸賞、英語版「精霊の守り人」で米国バチェルダー賞などを受賞しています。
前置きが長くなりました。
「獣の奏者」は「I 闘蛇編」「II 王獣編」「III 探求編」「IV 完結編」「外伝 刹那」と文庫でも5冊の長編です。
これだけ長いファンタジーというと、若い頃にトールキンの指輪物語1巻目を十数ページでくじけた身としては敷居が高かったのですが、最近のジャンル不問で未読作家の作品を読んでいるせいか、最初のハードルはすんなり越えることができました。
リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。母の不思議な指笛によって死地を逃れ、蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、母と同じ獣ノ医術師を目指すがーーー。(「I 闘蛇編」カバー裏より)
わずか14歳のエリンが、身の丈に合った階級の男と結婚して子供を産み育てるだけの人生ではなく、母親と同じ職業を選択し獣や人間など生き物の在り方を探求する決心をする。その様子を、エリン自らの運命のほか、母親の謎だらけの出自、その他登場人物の過去や運命などを緻密に描き、濃密な物語の始まりが宣言されるのがこの第1巻目です。
子供向けなのかはわかりませんが、読者の年齢層やファンタジーというジャンル分けをしなくても読み物、小説として普通に文庫本コーナーに並んでいるのは不思議ではないと思わせる内容でした。敢えて言うなら冒険小説というほうが近いかもしれません。なんとなく高校時代の自分に読ませたいと思いました。
読んでいて風景や人物の面立ち、動物の姿が脳内に浮かぶほどの描写力でした。翻訳ものではなく、作者も読者も同じ言語を使う者だからでしょうか?これは一気に外伝まで読める予感がしました。
0 件のコメント:
コメントを投稿