今回は、里見蘭・著「大神兄弟探偵社」です。
タイトルからお察しのとおり、ミステリーです。
読み始めたら一気に読んでしまいました。なんだろう?このスピード感は?
そのヒントが作者のあとがきにありました。ネタバレを含んでいませんので、抜粋します。
僕はまさにその「冒険小説ブーム」の頃、中学・高校生で、恐怖や困難を乗り越えて危機や困難に立ち向かう主人公たちの活躍に胸を熱くし、サスペンスに手に汗を握りながら冒険小説を読んでいた読者のひとりでした。
将来作家になりたいと思っていた僕は、自分もいつかはこんな小説を書きたいな、と夢見てもいたのです。
しかし悲しいことに、ブームというのは長続きしないもの。(中略)
この『大神兄弟探偵社』という作品は、現代の日本を舞台とした名探偵もののミステリーという枠組みのなかで、僕がかつて親しんできた冒険小説のエッセンスを蘇らせることができないだろうか、と考えてチャレンジした小説です。
物語は、大学生・城戸友彦が、絵画盗難事件の容疑者となったガールフレンドの姉の無実を証明しようと、ネットで検索した「大神兄弟探偵社」(それもホーム画面のみで何の宣伝も一切なし)に向かうのですが、面会しただけでいろいろ素性を当てられ、「気に入った事件しか担当しない」と言われて提示された報酬金額が3千万円もしくはこの探偵社で働くこと。後者を承諾したとたん、いきなり中国マフィアとの交渉の場に同行させられるという展開が一気にページを駆け抜けていきます。
著名な茶道家元の双子の兄弟、趣のある古民家、所有する自家用ヘリ(採算が取れないのでCM撮影などの営業もやってる)で敵陣に侵入、ルパン三世のような絵画奪還作戦、中国マフィアとドンパチ、(たぶん)美人の警察幹部、画商、誘拐 etc。
これだけの要素をそろえ陳腐にならずにスマートにスピーディーな展開になるというのは、作者がとても書きたかったという熱意の賜でしょうか。古い言い方を借りれば、冒険活劇という言葉が浮かびました。久々にエンターテインメント小説を味わった感があります。
新潮文庫ですが「新潮文庫nex」という、他の作品を見るにいわゆるライトノベル系のレーベルでしょうか?この「大神兄弟探偵社」の表紙のイラスト、冒頭にある主な登場人物紹介の見開きイラストがあるあたりそんな雰囲気がありますし、筋立てや各種設定もラノベっぽい気もしますが、それを差し引いても面白く読むことができる1冊でした。
冒頭にも述べましたが、「ちょっとここまでにして」としおりをはさんで離れるのが困難ですので(予定していた3〜4時間分のタスクが飛びました)、週末などまとまった休みに時間を取って読むことをオススメします。
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