ちょうど目の高さにこの本が面陳されていた棚の前を通ったとき、視神経がタイトルを捉えたのでしょう。「ちょっとちょっと!」と呼び止められるようにして3歩戻り、手に取った本でした。
奥付等によると、作者は1991年生まれ、2012年に史上最年少で「第19回松本清張賞」を受賞とあり、その受賞作がデビュー作である「烏に単は似合わない」です。
さて、帯には「異世界ファンタジー」とありますが、文春文庫ということで一読の価値ありではなかろうかと書店でぱらぱらとめくって文体を確かめました。個人的にはここで気が合えば間違いなしなのです。
なにやら平安時代の宮廷物語という優雅な風情で、文体も好みに合いましたので、迷わず購入しました。
物語は、宗家(宮家か朝廷の意?)の若宮の后候補として、宗家に仕える四大貴族の姫君4名が宮中に集まるところから始まります。
舞台設定もそうですが、人がカラスに変身したり、馬ならぬでっかいカラスが「馬車」をひき空を飛ぶという場面が出てきます。このカラスに変身するという設定などが「ファンタジー」と称されるゆえんなのでしょう。
しかし、なぜファンタジー色の濃い作品が松本清張賞?と思ったら、第10回までは推理小説や歴史小説を対象としていたのが、第11回からは長編エンターテインメント作品を対象とするようになったからなんですね。
いやいや、それでもちゃんと(?)殺人事件は起こりますし、謎解き、犯人捜しも書かれています。
ですが、この作品をミステリーとするならば、ミステリーの中心はその殺人事件ではなく、后候補として宮中に集まった4人の姫君の本質、本性というものが暴かれていく様がまさにミステリーだと思いました。
さらに、主要人物のひとりであるはずの若宮が終わり近くにならないと出てこないというのもミステリー?
(もっとも、序章に少年時代の若宮のエピソードが短く語られていますが。)
後半もだいぶ詰まってきてからやっと現れた若宮が姫君たちの本性の謎解きを始めます。そして、若宮が最終的に選んだ姫君は・・・という展開です。
本書は、序章で悪友と宮中を抜け出して桜を見に行った若宮が、ある家の姫君と遠くから目が合うというシーンで始まり、その姫君とおぼしき女性の視点で第1章が進みます。
読者はこの姫君の「味方」になって、どんどん物語の中に引き込まれていくことになるのですが、最後に「え?」というどんでん返しが待っていました。
ネタバレになるのでこれ以上は書けませんが、この作品も前に紹介しました「向こう側の遊園」同様、二度見ならぬ二度読みしました・・・。
さて、物語の終わり近くまで登場しなかった若宮は何をしていたのでしょう?
いきなり現れて姫君の本性をあーだこーだと言われてもと思ったのですが、巻末の解説によると「烏は主を選ばない」という次作において若宮が後ろでいろいろ動いていた様子が書かれているそうです。
これはさっそく書店で探さねば!
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続編はこちらです。まだ文庫化してないみたいで、ビンボーなワタクシは待つしかない?
続編はこちらです。まだ文庫化してないみたいで、ビンボーなワタクシは待つしかない?
(余談)
「烏に単は似合わない」に書かれた南家の男勝りの姫君なんですが、その素性を読んでいると、「宮廷神官物語」(榎田ユウリ著)に出てくる姫君を思い出しました。生い立ちも似ているし、男勝りなところはそっくり。「宮廷神官物語」の姫君は武術の達人でもあります。かっこいいのです。榎田ユウリ氏はストーリー展開に定評のある作家ですので、こちらもオススメです。
(男勝りの姫君が出てくるのは2巻か3巻あたりだったような・・・)
(男勝りの姫君が出てくるのは2巻か3巻あたりだったような・・・)
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