2015年6月26日金曜日

1133 本屋で探検34〜「リボン」(小川糸:著)

「不定期に本屋さんに行き、知らない作家の本を少なくとも1冊は買う」というルールに則って紹介する第34回目。
今回は、小川糸:著「リボン」です。

いきなり余談ですが昨日(2015年6月25日)、東京の学校に迷い込んだオカメインコの買い主を探しているという記事を見かけ、この本の内容を連想してしまいました。


さて、本のタイトルの「リボン」とは、祖母・すみれと小五の孫娘・ひばりが卵から育てたオカメインコの名前です。ふたりは「すみれちゃん」「ひばりさん」と呼び合うほどの仲良しで、リボンという名前は「ふたりの魂を結ぶ永遠のリボン」という意味ですみれちゃんが名付けたものでした。

二人で大事に育てたリボンですが、生後半年ですみれちゃんの不注意で逃がしてしまいます。
そこからリボンの人から人へのリレーが始まります。自分の意思で飛んで行ったところもあれば、恣意的あるいは人為的に選ばれて行ったところもありますが、リボンという名前のとおり、人々を見えないリボンでつないでいくように物語は進行します。

子供を死産した母親は、ベランダに一瞬だけ現れ「いっしょにあそぼ」と言ったリボンに生きる気力を取り戻します。

飼っていたオカメインコを死なせてしまった経験のある鳥の保護施設の若い飼育員は、何者かに虐待され紙箱に入れて捨てられていたところを保護されたリボンのリハビリを担当します。
保護されたリボンはお見合い会で父子家庭に引き取られますが、どうやら無期限に知り合いのバーのママに預けられてしまいます。

そこから脱出したリボンは、余命を宣告された60代の女性画家と公園のベンチで出会います。リボンは彼女に生きる力と絵を描きたいという情熱を与えます。
死が目前に迫った時、画家は知り合った若い編集の女性にリボンを託します。
しかし、その編集の女性も若くして2児を残して世を去ります。残された彼女の娘が育てることになりますが、大地震を体験した直後、娘はリボンを空に放ちます。

最後は、再びすみれちゃんとひばりの物語になります。リボンがいなくなった後、すみれちゃんが徐々に元気をなくし寝たきりになり、亡くなった後に遺言でひばりに思い出の場所であるベルリンへの散骨の旅を託します。

ここまで約20年ほどが経過しているのですが、物語中にもオカメインコは20年は生きることがあると書かれていますし、調べてみたら大事に育てると16〜17年は生きるそうです。

亡くなる少し前にすみれちゃんがリボンがいる幻影を見るシーンが出てきます。そして、ひばりが散骨の旅から戻りリボンの卵があった大木のところに立ち寄ったとき、そこにリボンが舞い降りてひばりの肩に乗ります。

果たしてこれも幻影なのか、肩に感じる重みがあるということから事実なのか?
作者が伝えたかったのは、そこに本当にいなかったとしても大事な人が存在したという事実や思い出は消えないこと、魂は繋がっているのだということなのかもしれません。それと、悲しみにとらわれず前を向いて生きることなのだと思います。

亡くなる人が多めの小説ですが、暗く重たい雰囲気はなく前向きになれるお話でした。
リボンという鳥を通して人々が悲しみや苦悩から再生する物語だと感じました。

さて、冒頭に紹介した迷いオカメインコはどんな旅をして、どんな人と触れあって中学校に迷い込んだのでしょうか?この本を読んだ後でしたので、いろいろと想像してしまいました。
早く元の買い主が見つかるといいですね。

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