2013年4月7日日曜日

435 「先送りせずに「すぐやる人」に変わる3時間」セミナーに参加した・後編


前回に引き続き、佐々木正悟@nokibaさんのセミナー後編。
前編は、どういう状況の時に先送りになるか、それを防ぐ方法について4つの項目で解説。
後編は、

1 先送りといいわけ
2 先送りとモチベーション
3 まとめ

この3つについて進められた。

1 先送りといいわけ〜課題を「優しく言い換え」したら先送りに

前編に出てきた「黒い人」と「カタツムリな人」。前者は直感で瞬時に動く。後者は黒い人が動いている間は寝ていて、緊急時でないと起きない思慮的な人。カタツムリな人はエネルギーを食うし、起こすのが大変なので、脳はカタツムリな人を寝かせておきたいといつも考えている。
スクリーン右が黒い人、左がカタツムリな人。

さて、難しい課題が出てきたとき、黒い人は難しいことを考えられないので、優しく考えようとする。

たとえば、「大事な仕事をちゃんとやるには?」という質問は難しいので、黒い人はこれを優しく言い換えようとする。この質問は次のように言い換えられていく。

1「大事な仕事はちゃんとやるべき?」→まだ難しい
2「大事な仕事には時間をかけるべき?」→やさしい。「Yes」と答えられる。
3「今ちゃんとやれる?」→「No」
4「今十分、時間がある?」→「No」
5「先送りにしたほうがいい?」→「Yes!」

この1から5までの質問は、黒い人が一瞬で行っている。まず1から2で質問(の趣旨)がすり替わる。カタツムリな人が起きていたらこうはならない。ここで最後の5の質問に「Yes」と答えたら負け。
上記の質問は選択をしているように見えるが、実は最初から「先送りにする」という決定がされている。

こうならないためにチェックリストが必要になる。黒い人に1〜5の質問を作らせないように、そして考えずに課題をこなせるようにするためだ。つまり、カタツムリな人を起こしてあれこれ考えないですみ、さらに黒い人に先送りにする言い訳を考える隙を与えないためにチェックリストを使用する。チェックリストを上から順番にやっていけば自動的に終わるような仕組みを作る。これが先送りを防ぐ方法となる。

ただし、チェックリストを作成するに当たっては、「英語の勉強をする」というような頭を必要とするようなリストは入れないこと。見た瞬間、やる気にならないようなリストを作ってしまうと、カタツムリな人は起きてこない。認知的に忙しくなって先送りとなる。

また、どうしても大事なプロジェクトをやるしかない、大量に認知資源を使うしかないという状況になった場合、後に残った作業はこれくらいの量で済みますというチェックリストを作る。それを見ることで、プロジェクトに多めに認知資源を使ったとしても残った作業に手を付けても大丈夫、と安心できるチェックリストを作るのが大事。

チェックリストは変えていっていい。むしろ極力変えていく。変えるならば、それを使う直前に変えてしまうのがベスト。チェックリストは現実に即したものであることが必須。チェックリストは黒い人だけで回るシステム、あるいはカタツムリな人を起こすためにあるもの。これらが達成されないリストならば、やるたびに変えるのもありだ。

また、先に出てきた黒い人が考える言い訳というのは、理屈が通っていなくてもいい。頭の中で一瞬にして「先送りにした方がいいよね?」「Yes!」と自問自答できればいいからだ。自分自身が納得すればいい。
だが、これを紙などに書くと言い訳が通らなくなる。そこで10分ほど先送りにしている言い訳を手を休めずに書いてみる。これくらいの時間をかけると思考を担当するカタツムリな人も起きて検討を始めるわけで、そうすると黒い人の作る言い訳が通らなくなるのだ。


2 先送りとモチベーション〜アンカリングでタスクを好ましく見せる

先送りをしないためにはモチベーションは必要か?
実は、両者はあまり関係がないという。むしろ、アンカリングが関係してくる。

例えば、首都高から降りたとき。スピード落としたつもりが70キロ出してて捕まったなど。100キロからみたら70キロは十分に落としたつもりになっている。100キロという数字にアンカリングされている状態。

また、アンカリングは曖昧なものに対して働く。好きか嫌いかはっきりしているものには働かない。
例えば、ダン・アリエリーの「詩の朗読」をいくらのお金を払って聴くか、いくらのお金をもらって聴くかという実験では、同じ詩を聴くのでも、払うかもらうかで感じ方と金額が違うという結果が出た。
有名なところでは、トム・ソーヤのペンキ塗り。人間は代償を払ってやることに価値があると勝手に判断しているのではないか。


(ダン・アリエリーの詩の朗読の実験は、こちらの本に出てきます。他にも身近な事例を用いた興味深い実験がたくさん出てきます。)

また数字にアンカリングされる傾向も強いことが解ったので、初めてやるタスクの見積もり時間は極力短くすることにした。
例えば最初9分で見積もりしたものは25分かかった。これは見積もり時間を多めに訂正すれば済む。ところが同じような作業を最初に40分とした場合、どんなに短縮しようとしても30分を切れないことがわかった。
つまり、最初に決めた見積もり時間というのは後々まで影響する。アンカリングされるということ。短く済ませたければ短くすべき。過度に短くすると先送りになるので、適当に決めないことが大事。

チェックリストを作るときは、自分が好ましいと思うことをいろいろ書く。多少歪曲させても好ましいと思ったことを書く。タスクを好きになるようなところにフォーカスしていかないと最初のアンカリングの部分で嫌な部分にフォーカスしてしまい、その先ずっと嫌なタスクになってしまう。

タスクリストを使う上では、タスクの名前、手順、時間、記録内容の好ましさははずせない。好きかどうかわからないタスクを好きなように見せることが先送りを防ぐうえで重要になる。

また、複数のプロジェクトを抱えてるような状況の場合、これは将棋の多面指しのような状況に似ている。一つ一つのプロジェクト、あるいは将棋の一面ごとは楽しいのに、途切れ途切れになると面白くない状況が続く。
これは記憶が途切れるのが原因。つまりプロジェクトが切り替えられるたびに、対局が移るたびにモチベーションが途切れてしまうため。これを記録でつないでやり、モチベーションもつないでいく。
TaskChuteならば、タスクにプロジェクト名を付けてフィルタリングして抽出すれば、日数がまたがって途切れ途切れに行った作業記録もプロジェクトごとに連続して見られるようになる。つまりモチベーションも想起される。

ところで、なぜ脳はカタツムリな人を起こしたくないのか。それは時間をかけてやっと起こしたのに、結果が悪かったという事態を避けたいため。こうなった場合、モチベーションがなくなってしまい、カタツムリな人が二度と起きてこない状態になってしまう。これを避けたいがため。

そこで、結果が悪かったので手戻りになってしまった場合のテンプレートを作っておくことで、この事態を避けることが出来る。これがあるということで、カタツムリな人を再び呼び出しやすくなり、モチベーションも維持できる。


3 まとめ
先送りを防ぐ方法は、究極的には「時間をゆっくりかける」努力をすること。

カタツムリな人は基本的にはほとんど寝ている。これを起こすのが難しい状況が「認知的に忙しい」ということ。
これに似た状況が何かを我慢しているとき。例えば、ダイエット、禁煙、貯金のため節約している状況など。こういうときは努力が必要になる。努力が必要なときというのはカタツムリな人が起きていなければならない。この起こそうとすることに認知資源を使う。認知的に忙しい時と似ており、先送りが良く起こる。

ひとつに決まらない時というのも、まず決めるということ。「まず決める」と認識することによってカタツムリな人が動くしかなくなる。黒い人が決めたところで計画にならない。カタツムリな人が動いてプランニングすることで、次のアクションを一つに絞ることができる。
納期に間に合わない、言い訳を考えなければならないというのは、すべてカタツムリな人がやらなければならないこと。黒い人がやっても不安になるだけで、結果的に認知的に忙しくなるだけで意味が無い。

時間が取れないというのも基本は同じで、この時は判断を早めなければならない。これを黒い人がやると失敗するので、時間を無理矢理にでも取ってカタツムリな人に判断させなければならない。

緊急ではない場合。これは緊急性を検討する。人は緊急性がなければやらない。緊急性を検討しないと、重要性だけでは動かずに先送りになる。さもなくば朝一タスクでやることで先送りを防ぐ。

課題を優しく言い換えたら先送りになる。難しい課題はどう言い換えても難しいわけなので、時間を掛かけて取り組む必要がある。

アンカリングは想像以上に強力。甘く考えてはいけない。


以上、3時間に及ぶセミナーを、もの書き写真堂がグッときたところを中心に前後編でまとめてみました。
個人的には、「認知的に忙しいとき」「言い訳」というのが該当するかなぁと。また、アンカリングの話は「なるほど!」と思いました。最初の見積もり時間が「超えられない壁」になり得るという話は目から鱗。これは再検討の必要があるかも。
また、先送りの防止にはタスク管理が有効、切っても切り離せないというのを再認識しました。

先送りをなんとか阻止したいけどうまくいかない。そうお悩みの方にはこのセミナーが他でも開催される際にはぜひ参加することをお勧めします。その前に、佐々木さんの次の2冊の著書で予習しておくこともあわせてお勧めします。セミナーの理解度が違ってきます。






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