2012年9月8日、大阪にてコグレマサト氏、いしたにまさき氏、堀正岳氏の3人による「Evernoteオールインワンガイド発売記念イベント」が開催された。
最初に3氏がそれぞれEvernoteの過去、現在、未来を語り、その後6人の有志によるLTが行われた。
以下、3氏の話の概要と、もの書き写真堂がグッときたLT2つを紹介。
1 いしたにまさき氏のEvernote
冒頭で、いしたに氏が書いた2008年のブログ記事にいまだに多数のアクセスがあることを紹介。(記事はこちら)
今読むと技術的な情報は古いが「すげぇ!」という思いは伝わってきて、すでに使っている人はにやにやしてしまうし、これから始める人には「いしたにさんがすげぇと言っているからなにかあるに違いない」と感じるんじゃないだろうか。
その記事には、「この記事がご縁で日本で初のEvernote本を出します」とある。
それが↓この本。
(注:今は改訂版が出ているが、今回オールインワンガイドが2012年7月に出版されたので、購入する場合はオールインワンガイドがいい。)
この本が「バカ売れ」したのは、初めてのEvernote本という他に、
- Evernoteの自由度が高すぎて使い方に困っている人が多かった。
- 基本的にソーシャルサービスではないので、誰が使っているか分からずにあれこれ聞けない。
という背景があったと思われるとのこと。
2008年のブログ記事ではメモツールだと書いたが、現在はそのほかに公式アプリの録音機能が秀逸であること、サードパーティのFastEverなどで強化されていることに言及。
また、Evernoteを使いこなしていく上でいしたに氏のオススメのアプリが「Dayone」。一言で言うと日記アプリだ。(Mac版もあり)
Evernoteだとついうっかり他のノートを見てしまい、先に進まないということも。そこでDayoneを使い、書くことに集中するのだという。
(もの書き写真堂補足:Evernoteに直接送れないので、DropboxかiCloud連携にする必要がある。そこから必要に応じてEvernoteへ。)
これからのEvernoteに期待することは、「思い出すことすら忘れさせてほしい」。「そういえば」と検索する前に、「今やっていることに関して、こんなものをお探しでは?」とEvernoteが教えてくれる、という方向になれば、という。実際、Evernote社ではその試みも始まっているそうだ。
2 コグレマサト氏のEvernote
このイベントの数日前に沖縄離島レポートに行って真っ黒に日焼けしたコグレ氏。冒頭ではその旅行中のEvernoteの活用法を披露してくれた。
- 航空チケットなどの書類を取り込んでおく。
- 旅の行程を記録しておく。
- Evernoteの録音機能で、現地の音楽などを録音する。
日常では、「使いこなすための○○の方法」というのはやっておらず、ちょこちょこといろいろなものを入れている。ただ、本当にありとあらゆるものを入れるものだろうか、という疑問もあるとか。
また、Evernoteを使うこと自体が目的になっている人がいるのではないかと。Evernoteはあくまでも道具だという。つまり、使う人によって使い方も違うということか。
現在、「Evernoteは何か一周した感じがする」というコグレ氏。Evernoteが出てからの初心者が今上級者になって、そして今また初心者が増えている状態、2周目の状態。
「そんな状況の中で、たまにはEvernoteとの距離感を考えてみるのもいいかも」とコグレ氏は締めくくった。
3 堀正岳氏のEvernote
堀氏とEvernoteとの関わりは、Evernoteの最初のブロガーミーティング、そこでEvernoteの日本語化に参加したのが始まりだという。「保存された検索」という名前は堀氏の訳だそうで、「長すぎるので、未だになんとかできなかったか」と悔やんでいる部分だとか。
「Evernoteのどこが便利かと問うと、たいていの人は「クリッピング」「クラウド」「タグ」「OCR」などを挙げるが、これはEvernote本来の機能であるけど、本質だろうか?」と問う堀氏。
この便利な機能を一言で説明できない難しさに、多くの人が挫折するという。「じゃあ基本に戻ってみよう」と、Evernoteがなかった時代を振り返ってみる。
Evernote以前は、たくさんのファイル、データ、画像があちこちのフォルダ、あちこちのデバイスに散在していた状態。探すのも一苦労だった。
それがEvernote以後は、このEvernoteにただ投げ込むだけ。さらに使いこなしたい場合は、タグやスタックを使えばいい。
だが、堀氏は今以上の複雑な機能はいらないという。サードパーティで提供されるような他の機能は特定の使い方を助けるためのものだと。
現状でも記憶できないと思っていたこと、たとえば音などもEvernote本来の機能として記録できるようになっている。
忘れたくないことを紙に書くようなことが、Evernoteでできるようになったということ。デジタルの紙、これがEvernoteの本質という。
モレスキンとEvernoteのコラボノート。2012年10月モレスキンのオンラインショップで発売。 |
また、先頃発表されたEvernoteとモレスキンのコラボレーションだが、堀氏は「デジタルの紙もアナログの紙も、かけがえのないものを入れる『器』」という。
「何を入れて、何を取り出すかに価値がある」
この考えが、これからのEvernoteの使い方に求められる姿勢なのかもしれない。
Evernoteの未来について、堀氏はいしたに氏と同様のことを考えており、こちらが思い出さなくても思い出させてくれる仕組み=「想起」を挙げ、Evernote社でも取り組んでいるがまだまだだという。
「ノートを書き出すと、関連しそうな過去のノートを出してくれる。Evernoteはこれまで機能で攻めてきたが、これからは「経験の提供」で攻めるべき。そういう意味で思い出すための『器』ができた」
「何のために、どういうふうに使うのか、あるいは何を入れて、何を思い出したいのか、それが使う側のおもしろさ。思い出すことが増えたら何ができるのか、どんな可能性があるのか、集めた資料はそれを実現するためのサポーター、そのサポーターを増やしてくれるのがEvernote」
「Evernoteを使わない人はいるけど、記憶しない人はいない。人間の脳や経験を拡張するようなwebサービスは今後も増えると思う。そのときのためにEvernoteで練習しておきましょう。記憶が増えたら何ができるのか、それが次のステップのサービスになるのではないだろうか」
4 グッときたライトニングトーク(LT)
当日は6名の方が5分間のLTに参加。出席者の投票で1位が決定される方式で、今回同率1位になったおふたりのLTが偶然にも、もの書き写真堂のグッときたLTとなった。(記載順はじゃんけんで1位、2位が決定した順番です。発表順も同じでしたが)
@choiyaki さん
楽しく使えばEvernoteは使いこなせるというコンセプトのもと、旅行のノートブックの活用方法を解説。旅行前にいろいろなデータ、たとえば時刻表、現地の地図、食べ物屋さんの情報などなど。旅行中は写真や行動記録など、旅行後はレシートやら諸々のものを入れる。旅行の準備も楽しいし、旅行が終わってもノートを見返せば楽しくなる。つまりEvernoteが続く、という仕組みだ。
@chroto_ さん
某社パイロットの@chroto_ さんは操縦士になるための訓練中に某社の某な出来事のため、訓練中止、カスタマーセンター(電話案内)に配置換えとなった。
訓練中は覚えるべきことが山ほどあったので、それをEvernoteに入れ試験対策などに活用。カスタマーセンターに異動になった後は、数ある割引制度を間違えないようにそれぞれをEvernoteに入れ、それらをリンクしたノートを参照しながら応対していた。また、お客様との会話内容をマニュアル化したものもEvernoteに入れて参照した。
もの書き写真堂的にグッときたポイントは、旅行ノートは@choiyaki さんと同様のことをやっているのだが、旅行前で終わっていたのでその後を参考にしようと思った点。
@chroto_ さんは、職種の180度転換にもめげず、Evernoteを最大限に活用して乗り切っているところ。ノートのリンクは知っていたが、そういう使い方をするのかと納得がいった点。Evernoteが使える職場がうらやましかった点(我が社はクラウドは全面禁止です・泣)。
以上、ざっと振り返ってみた。
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