3月、4月は転居のシーズンです。
もの書き写真堂も毎年3月の職場の異動発表に一喜一憂したものです。自分が動かなくても周囲の少なくない人数が入れ替わり、それはてんやわんやでした。
さて、転勤や卒業、入学などで引っ越す場合、賃貸住宅ですと大家さんや管理会社(あるいは仲介業者)から「部屋のクリーニング代を敷金から差し引く」、あるいは「室内クリーニング代が敷金では足りないから○万円支払って」などど言われたことはないでしょうか?
もの書き写真堂も昔、賃貸住宅に住んでいた際に管理人から「室内の清掃代で全額相殺。あなたが入居したとき、きれいだったでしょ?だから次の人のために清掃するの」と言われて戻ってきませんでした。
果たして、この清掃代って賃借人が払うものなのでしょうか?
不動産売買・賃貸契約については地域の慣習もありますが、上記のような状況も20年以上前の話で、当時は「そんなもんなのかなぁ」と思いつつ言われたとおりしていました。世間的にもそれほど騒がれるほどでもなかったと記憶しています。
しかし、近年は賃貸住宅の退去時に伴うこうしたトラブルが増加し、裁判も最高裁まで行った事例があるそうです。
このようなトラブルを防ぐために、国土交通省がガイドラインを作成しています。
まず「原状回復」とは何か、ここに定義がありますので引用します。
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。→原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化(注:アンダーライン、赤字は原文のまま)つまり、清掃などを行い通常に生活していれば、冒頭の事例のような「次の人のための室内清掃代」は支払う必要がない(賃料に含まれる)と解釈できます。
ただ、上記サイトにも書かれていますが、契約自由の原則があります。双方の合意で締結した賃貸契約書にどのように書かれているか、退去時の精算に関する特約があるかどうかが問題になります。ここに退去時の室内クリーニング代などの原状回復費用は賃借人が支払う、あるいは敷金で精算するなどの記載があった場合、賃借人が負担することになります。
それでも、退去時に常識の範囲を超えた額を請求された場合は、その内容についての詳細な見積書を貸し主に出してもらいましょう。
その中に必要以上の補修項目(壁紙の全取り替えというような賃借時の状況よりアップグレードさせる補修など)があったり、単価が相場より高かったりした場合は交渉の余地ありです。賃借人が負担すると書かれた契約書がありますので、あくまでも「話し合い」で双方合意の着地点を見つけることになります。このガイドラインを提示しながら、貸し主と交渉するのもひとつの手です。
もっともそれは定義にもあるとおり、通常に使用している場合に限ります。ヘビースモーカーで白かった壁紙が極端に真っ黄色になったり不注意で建具を壊したなどという場合には、賃借人が支払うことになります。
また、問題になることのひとつとして、入居時にすでにあった破損やカビなどによる汚損なのに補修代を請求されたという場合です。これは「最初からあった・なかった」との押し問答になる可能性があります。
先の国土交通省のガイドラインでも、このようなトラブルを未然に防ぐために入居時も気をつけましょうと呼びかけています。
これはもの書き写真堂も実際にやったことですが、鍵引き渡し時に仲介業者などの立ち会いで室内チェックをして記録を残します。文書にできないと言われたら、自分で写真を撮りながら「ここ、すでにカビで壁が汚れてますよね?」と確認を促します。ガイドラインには間取り図に書き込んでおくということも書かれていますね。
あわせて、契約書も読まずにはんこを押すのではなく、退去時の特約があるかどうか、ある場合はどんな内容なのかをきちんとチェックするのが重要です。
以上、ざっくりと入居時の注意点もからめてお話ししましたが、どうしても急な転居ですと慌てて賃貸契約をしてしまいがちですし、賃借人に不利な事が契約書に書かれていたので指摘した場合に「じゃあ、他を探せば?」と言われたら困りますのでそのままハンを押してしまうということも考えられます。
もし、退去時の請求に納得がいかない場合にはガイドラインを用いて交渉するほかに、都道府県の不動産業担当部署や、建築指導センターといった公益法人の相談窓口で相談することで解決の糸口が見えることがあります。
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