思い立ってから1年と3ヶ月、やっと公正証書遺言ができました。長かったぁ。
ここまでかかったのは財産があるからというのではなく、猫と葬式・墓がネックだったのでした。
遺言書を作成してみて実感したのは、
「生きるのも大変だけど、死ぬのも大変だぁ」
ということでした。
一昨年(2012年)12月、入院・手術することになって初めて「死んだらどうする?」をはっきりと意識しました。漠然と考えていたことはいたのですが、頭の中だけではっきりとした意思になっていないことに気づきました。
一番困ったのは「猫」です。
自分が死んだら、たぶん親族の手で「処分」されてしまうでしょう。
飼い主がいなくなったせいで、まだ生きられる命が消されるのだけは防がねばなりません。
ということで、知り合いの弁護士に相談したのですが、そこまでの経緯はこちらのエントリを読んでいただくと助かります。
→354 遺言書を作ってみる1〜思い立ったが吉日
では、なぜここまでかかったのか?
だいたい次の3つに集約されます。
- 猫を引き取ってくれる人が見つからなかった。
- 葬式と墓が決まらなかった。
- 自筆遺言で手続きが進んでいたのだが、やはり公正証書遺言が万全ということで方針転換したため。
- ネット関連の整理について弁護士の理解を得るのに苦労した。
同じように困っている人の参考になればと思い、一つずつ解説していきます。
1 猫を引き取ってくれる人が見つからなかった。
これは実家で猫を飼っている友人が引き受けてくれることになりました。友人からは「猫の性格や食べ物のことなど、詳しくノートなどに書いておいてね」とありがたいアドバイスもいただきました。現在は、このノートの作成に四苦八苦しております。
遺言書には平均寿命までの餌代なども明記しました。これについては、公証人から上限額を決めた方がいいと言われ、毎年かかっている餌代、これからかかるであろう病院代などを考慮して計算しました。
そんなとき、2014年2月27日の毎日新聞にこんな記事が掲載されていました。
「ペット信託:新たな飼い主へ「遺産相続」 高齢者の支えに」
(現在はURLが変更されたなどの理由でページが見つかりませんでした。)
記事では、遺言書で相続人である娘にペットを託すことを記載しただけでは相続争いに巻き込まれ、ペットのために遺産が使われない事があるためにペット信託を考案した行政書士の話が書かれていました。
ここのところは公正証書遺言ならば問題ないと思うのですが、他の相続人が裁判を起こしたりなんだりした場合、その間のペットはどうなるか?なども問題になりそうですね。
それに高齢者の一人暮らしで身内もいない、ペットを託す知人もいないとなるといくら公正証書遺言を作ろうとしても、遺贈する相手が決まらないと文言にできないわけです。そういう人たちが「ペット飼育のための遺産相続」をするうえでの選択の一つになればいいですね。
2 葬式と墓が決まらなかった。
さて、猫の次の難関は「葬式と墓」でした。
まず、喪主は身内でないとNGだそうで、自分の妹にやってもらうのはまっぴらごめんと思っていたので「葬式をやらずに火葬場直行でお願いします」と弁護士に伝えたら、「それは他の親族が意義を申し立てたり、いろいろと大変だからやるべき」と言われ、遺言書作成が頓挫しました。
これは、弁護士の今までの経験からの話だそうです。つまり、なるべくトラブルなく遺言を執行させる意味があるわけです。それはわかるんですが・・・。
さらに、自分で墓を建ててと思ったら、子供(後継者)のいない人は墓を持てないのだそうです。うまく建てられたとしても埋葬してもらえなかったという実話を別の友人から聞かされ途方にくれました。
葬儀屋さんにも聞いてみたのですが、墓所は買うのではなく墓所の土地を使用する権利を得るということで、後継者がいなければその土地を返還しければならない(使用する権利の消滅)ということだからだそうです。つまり、最初から後継者がいなければ、使用権も得られないということになります。
じゃあ、どうすれば?
民間霊園で合祀施設を設けているところにお願いするのだそうです。う〜ん、死んだら分からないとはいえ、知らない人と骨がぎゅうぎゅう詰めになるのはいやだなぁ。
そんなとき、美容室で雑誌を読んでいたら「樹木葬」という記事に出合いました。
「樹木葬」でネットを検索した結果、後継者は不要(だいたい33年くらいで供養終了となるため)、宗派も問わないところがほとんどでした。さらに場所によってはペットとの合祀も可能と。「これだ!」と思いました。
弁護士にもこれを伝え、「葬式はしない」こともなんとか説得して了解してもらいました。
そのかわり、どうしてそう思ったのかなどを「付言」(遺言書本文の後に書かれた意思など)で記載しておくことと指示されました。
実はこの「付言」を書くのにも相当の時間を要しました。単なる「身内に対する悪口・愚痴」になってはまずいです。言葉を選びに選んで書きました。
3 自筆遺言で手続きが進んでいたが、やはり公正証書遺言が万全ということで方針転換したため。
作成当初、弁護士から「平均寿命を考えるとあなたはまだ何十年か生きるだろうから、遺産の額も現在残高から相当減ることが予想される」ということで、書き直しの費用がかからない自筆遺言にしようということになりました。
これがけっこう大変でして、下書きを作ってから清書する際に何度失敗したことか・・・・。1文字、2文字なら訂正方法がありますので、最後はそれにしました。
ちなみに訂正する場合は、線を引いて見え消しにし、そこに押印はしないことだそうです。押印すると下の文字が朱肉の色で見えなくなることがあり、何をどう直したのか判明しないとトラブルの元になるためです。
見え消しにしたのち、欄外に「○行目××文字訂正 (署名捺印)」とするのだそうです。
やっとのことで自筆遺言を作成し、弁護士に確認してもらっていざ封をするという時点になって、遺言執行のために自宅に入るための鍵をどうするかという問題が浮上しました。
単身なうえ、身内とも疎遠(さらに遺産相続から排除したい)な場合、死亡を聞きつけて家に押しかけて財産を勝手に持ち出される可能性があるというのです。
自筆遺言の場合、裁判所での検認という作業があり、これに2週間ほどかかるそうです。その間に親族が勝手に財産を処分されてしまうこともあるとか(身内であれば、家の鍵などはどうとでもなるそうです)。後々に諸手続で金銭などは遺言書どおりにできるかもしれませんが、猫が「処分」されてしまっては取り返しがつきません。ここは弁護士のアドバイスどおり、公正証書遺言にすることにしました。
公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらいます。もうその道のプロですから、自筆遺言の文章をもとに、すっきりまとめてくれました。
ただ、財産の現在残高(不動産評価額も含む)によって公正証書作成代がかかります。しかし、自筆遺言と違って裁判所の検認は不要で、速攻執行できるという最大のメリットがあります。お金はかかりますが、作り直しも可能です。
今回は、公正証書遺言作成代のほか、弁護士報酬(遺言書作成にかかる分のみ。遺言執行時は別途支払う)も支払いました。
さて、長くなったことと、内容がちょっと遺言一般を語るのには毛色が違うため、「4 ネット関連の整理について弁護士の理解を得るのに苦労した。」は別エントリにします。
ということで、先日、2014年3月にやっと遺言書ができあがりました。
公証役場に弁護士と弁護士事務所の事務員さんと行きました(公正証書を作成するには2人の証人の立ち会いと署名押印が必要)。
その後、弁護士から聞いた話では、これまで数十通ほど遺言書を作成して預かっているが、亡くなった方のうち執行されたのはわずか数件だそうです。その他は、相続人が「法定相続割合で分けることにしたから」というものだそうです。
弁護士が遺言執行者となっていてそれを執行する場合、弁護士報酬の支払いが発生します。これも遺言書に盛り込まれるのですが、少なくない額です。争いごとが起きた場合にそれも含めて手続きしてもらうことも想定しますと、多少高額でもやむを得ないかなぁとも思います。
弁護士が遺言執行者となっていてそれを執行する場合、弁護士報酬の支払いが発生します。これも遺言書に盛り込まれるのですが、少なくない額です。争いごとが起きた場合にそれも含めて手続きしてもらうことも想定しますと、多少高額でもやむを得ないかなぁとも思います。
しかし、相続人が公正証書遺言を執行しないことを選べるのでは作成した意味がなくなってしまうのでは?とも思ったのですが、ここは別途考えることにしました。
最後に。
先日、知り合いから「遺言書を作るって、近々死ぬ予定あるの?」と聞かれたのですが、そのときは苦笑で返すことしかできませんでした。
今でしたら、「近々ではないけど、死ぬ予定はあるから作っておいたの」と答えるでしょう。
備えあれば憂いなし。身内がアテにならない場合、死ぬ前に自分でなんとかせねばならんという思いが今回の作成につながりました。
それを考えさせてくれたのが、先の入院・手術の体験でした。今となっては「病気も悪くない。それで死なない限りは」と、良い体験だったと思っています。
備えあれば憂いなし。身内がアテにならない場合、死ぬ前に自分でなんとかせねばならんという思いが今回の作成につながりました。
それを考えさせてくれたのが、先の入院・手術の体験でした。今となっては「病気も悪くない。それで死なない限りは」と、良い体験だったと思っています。
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