2015年4月3日金曜日

1054 本屋で探検21〜「スノーホワイト」(森川智喜・著)

「不定期に本屋さんに行き、知らない作家の本を少なくとも1冊は買う」というルールに則って紹介する第21回目。
今回は、森川智喜・著「スノーホワイト」です。

物語の主人公は襟音ママエ、中学生。本名はマルガレーテ・マリア・マックアンドリュー・エリオットという異世界出身の女の子で、白雪姫に出てくる何でも知ることのできる魔法の鏡を使い、助手の小人とともに私立探偵をやっています。


「え?お客さんの依頼内容も調査結果も先に鏡に尋ねておしまい?つまらん」(本をぱたん!)

・・・と、ちょっと待った!
最初のエピソードの、それも冒頭だけで「つまらん」と本を閉じるなんて損しますよ。いや、本代のことじゃなく、読まなかったことに、です。

ママエをたずねてきた依頼人は、探偵が中学生ということで不審を抱いてなかなか依頼内容を切り出さなかったり、はしょったりします。そこで、面倒くさがりなママエは鏡に尋ねて全部聞いてしまい(時には依頼人が話していない依頼内容そのものまで)、依頼人に「調査結果」を話してしまいます。そんなわけでなおさら不信感を募らせます。
ママエは仕方なく鏡で見た経過と結果から推理してつじつまを合わせながら依頼人に解説します。

まずは以上のところが読みどころの第1ポイントです。王道の推理小説を逆回しにしているような錯覚を覚えます。巻末の解説者によると「刑事コロンボのような手法」とのこと。なるほど、そんな感じですね。

推理小説なので余計ネタバレ厳禁のため詳しく書けないのが苦しいですが、先にお客さんの事件の解決方法をずばっと言ってしまい、「わたし、まだ何も話してないですよ!」と依頼人に突っ込まれたら再び鏡にこそっと尋ねて冷や汗かきつつ推理したかのように説明していきます。

第2のポイントは、依頼人の屋敷にママエのほか、探偵の緋山、三途川が招かれ、届けられた脅迫状の犯人を探すエピソード。
相変わらすママエは鏡に頼りますが、おおっぴらに鏡を出せません。そこで何度もトイレに行くため、皆に怪しまれます。

鏡にたずねて真相はわかったのですが、そこまでの経緯が二転三転、それが図解入りで探偵達の口から語られます。これがひねりにひねり込んであって一読では頭に入ってきませんでした。冒頭のようなラノベ的なノリかもと思って読んでいたらわけわかめになります。おそろしや。

第3のポイントは物語の後半です。
説明が遅れましたが、この物語は2部構成になっていて第1部は「襟音ママエの事件簿」でママエの探偵としての日常が描かれています。第2部が「リンゴをどうぞ」で、次期王位を狙う后が「次の王はママエ」と鏡が語ったことからママエ暗殺を企てるお話です。

この後半部分は、言うなれば「最初はウォーキングしていたはずなのに、いつの間にかジョギングになって、最後は全力疾走していた」というくらいのスピード感でした。

やはり醍醐味は白雪姫のエピソード(白雪姫の命を狙うお后、真実を写す鏡、7人の小人など)を発展させた展開です。
この作家さんの本領発揮という感じで、オリジナルの白雪姫からは想像も付かないような鏡の使い方がこれでもかっ、というくらいに繰り出されます。
それでもオリジナルの白雪姫の鏡から基本の使用方法は逸脱していない。いや、白雪姫でこれだけの使い方が出来れば結末は変わっていたんじゃないかとさえ思えるほどでした。

この第2部はスリル&サスペンスな様相を呈し、一気に楽しく読めました。さすがに第14回本格ミステリ大賞を受賞するほどの作品なわけです。
え?疑っていたのかって?それは、いや、その(汗)。
まあ、読んでみてください。でも、決して最初の数ページでやめてはいけませんよ。


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